【第2回】「この点数どう思う?」TOEIC525点の慶應理工生が、東工大(科学大)院に進学して大手内定7社からドコモを選んだ理由
前回の最後、とっしーさんは大学院で慶應ではなく東工大を選んだと語り、「そこには理由がありまして……」と言葉を濁しました。第2回は、その理由から始めます。
大学院入試の話、金融インターンで感じた違和感、そしてTOEIC525点で面接官に投げかけられた一言。学生時代から、大手通信会社の内定を決めるまでをたどります。

長江 利行(ながえ・としゆき)
訪日外国人に日本の魅力を伝えるインバウンド事業家。慶應義塾大学理工学部を経て、東京工業大学大学院社会理工学研究科を修了。NTTドコモでITエンジニアとして働いたのち、米国シリコンバレーに駐在し、スタートアップ投資や事業提携の創出に携わる。
世界85カ国をめぐり、2,000人以上の外国人と対話するなかで日本を客観的に見つめ直し、2023年に独立。YouTube(英語:「Toshi Guide from Japan」、韓国語:「토시 가이드」)やツアーガイドサービスを通じて、外国人の日本旅行を支えている。趣味は旅、テニス、韓国文化。
慶應で推薦をもらえず、東工大の大学院へ
――前回、大学院は慶應ではなく東京工業大学(現:東京科学大学)に進学されましたが、その経緯を教えてください。
正直にお話ししますと、東工大を目指したのは、慶應の推薦がもらえなかったからです。慶應は成績上位1/3なら書類だけで、真ん中1/3は書類と面接で院に行けて、下位1/3は一般受験に回されます。
恥ずかしながら、私は下位1/3だったみたいで、一般受験に回されました笑。それなら、同じ経営工学で研究も面白そうな東工大も受けてみよう、と思った次第です。
院試は、過去問と授業のノートを持っている人が合否を分けます。
慶應は自分が受講していたので入手できましたが、東工大は外部からの受験なので不利です。困っていたら、たまたま就活説明会で知り合った東工大の学生がいて、その方に連絡したらノートも過去問も全部くれました。おかげで、外部でも同じ土俵で戦えました。
「TOEIC525点ってどう?」
――院試はペーパーテストと面接ですか?
そうですね。東工大は、筆記に受かれば、よほどのことがない限り面接では落ちません。筆記は無事通って、面接に進みました。当たり障りのないことを話したんですが、1個だけ、はっきり覚えている場面があります。それは、TOEICの点数についてです。
今でこそインバウンドの仕事で英語を使っていますが、当時のスコアは、TOEIC525点。面接で、担当になる教授から、「長江君、TOEICのスコアを出してもらったけど、この点数、どう思う?」と言われました。
「恥ずかしい点数だと思います。でも、入ったらしっかり英語を勉強します」。そう答えて、なんとか通過しました笑。
その言葉が本当になるのは、もう少し先の話です。ちなみに、そのあとドコモ入社時もTOEIC受験しましたが、その時でも575点。学生時代の英語は、その程度でした。

金融は違うかも
――就職活動は、どんな業界から見ていたのでしょうか。
最初は金融でした。大学院1年の夏に、日本生命やみずほ銀行、三菱総合研究所などで、金融のリサーチや運用の部署でインターンをしてみました。研究で金融をやっていたので、自然な流れではあったんです。
ただ、やってみて「金融業界、違うかも」と思いました。
インターンでの配属は、株のトレーダーのようなマーケットの部署でした。そこで話を聞くと、相場が開く9時から3時はトイレにも行けない場合もあり、昼休みもないとのこと。人によっては、おむつを履いてやっている人もいるそうです。
それくらい真剣なんだと思います。でも、これを60歳まで、40年間続けるのかと考えたら、ちょっと違うのかもしれない、そう思った経験でした。
フォローさせてもらうと、金融業界全体がそうという話ではまったくないんです。私がたまたま見たのが、かなり特殊な部署だっただけです。同じ金融でも会社や職種によって全然違いますし、フロントオフィスやバックオフィスなど部署それぞれの面白さがあります。
そのため、私の経験だけで「金融は大変」というのは正確ではないので、あくまで一例と考えてください。

理工学部だけど理系採用ない問題
――そこから、どう方向を変えたのですか。
とりあえず、いろんな業界を見てみようと考えました。そこで、通信、鉄道、飲料、商社など幅広い各業界のトップ5あたりを横に並べて眺めて見ることにしました。そのうち、ITと通信に絞っていきます。
慶應の管理工学は学部こそ理工学部ですが、完全な理系ではないので、理系採用の枠がほとんどないんです。機械系や電気系ならメーカーの技術職に行けますが、経営工学は行けても工場の生産管理くらいです。文系就職か、その中でも理系寄りとなると、ITや通信に絞られると気づきました。

ドコモに感じた将来性
――最終的に、ドコモに決めた経緯を教えてください。
有り難いことに内定は7社くらい頂きました。通信業界ではNTTドコモ、NTTコミュニケーションズなど、金融業界では三井住友信託銀行、信金中央金庫などです。そのなかでなぜドコモかですが、正直に言えば、積極的理由と消極的理由の両面があると思っています。
前者は、通信業界にポジティブな可能性を感じたためです。
大学院1年の冬に2日間のインターンに参加したんですが、2010年代の始めでスマホが1人1台に広がり始めた頃でした。そこで、3Dに見えるメガネや、匂いや触覚なども含めた五感を通信で送る技術など、今まで見たことのない最先端な技術を知りました。そして、それを組み合わせれば、離れて暮らす人ともあたかも隣にいられるサービスができ、地域格差を無くせると思いました。地方出身ですから笑。そして、そういうものを作ってみたいと思い、ドコモに入社しました。
後者は、大手で待遇がいいと思ったからです。給与も福利厚生も悪くなく、休みもしっかり取れそうで。もちろん、面接ではこんなことは言ってません笑。

次回▶︎
第3回:8000万人の顧客情報の管理、20代で50代のマネジメント:ITエンジニアからシリコンバレー駐在員になったドコモの9年3カ月
編集後記
進路の選び方が印象に残りました。学科は「一番面白そうだったから」、大学院は「推薦をもらえなかったから」。良い意味で深刻にならず、時々に応じて最適に生きている感じがしました。
TOEIC525点を前に、自分をごまかさず、正直に認めたうえで前を向く。この素直さが、のちに英語を武器に海外へ出ていく人の原点なのかもしれない、と思いました。
(探究ゼミ:浦野)
長江 利行(ながえ・としゆき)さんのキャリア論まとめ
- 第1回:「旅に出ると肩書きが消える」慶應・ドコモ・シリコンバレーを経て「インバウンド事業家」となったToshi Guide長江利行さんが語る旅とキャリア
- 第2回:「この点数どう思う?」TOEIC525点の慶應理工生が、東工大(科学大)院に進学して大手内定7社からドコモを選んだ理由
- 第3回:8000万人の顧客情報の管理、20代で50代のマネジメント:ITエンジニアからシリコンバレー駐在員になったドコモの9年3カ月
- 第4回:NTTが無名」だったシリコンバレー投資担当の奮闘記:34歳でドコモを辞めインド内定も手放して起業したインバウンド事業
- 第5回:「他人軸を捨てた時仕事が面白くなった」大手・海外駐在を経たインバウンド事業家が語る、毎日が文化祭のような自分軸キャリア論
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