【第1回】東大理三卒の医師は、なぜマーダーミステリー作家になったのか?ナズナさんの原点と学生時代

医師、Kindle作家、翻訳家、そしてマダミス作家。いくつもの顔を持つナズナさんのキャリアは、東京大学理科三類という日本最難関の学部から始まりました。

ところが本人に話を聞くと、そこには気負いも気取りもありませんでした。

「なんであんなに勉強が好きだったのか、自分でもわからない」と語るナズナさん。全4回の第1回は、その学生時代から始まります。

ナズナさん

フリーランス医師/Kindle作家/翻訳家/マーダーミステリー作家

東京大学理科三類(医学部)を卒業後、医師として臨床の現場や研究に従事。2024年に医局を離れ、現在はフリーランス医師として働きながら、マーダーミステリー(マダミス)作家としても活動している。

2023年、初の著書「勇気を出して推しのKindle作家に会いに行ったら人生変わった」をkindle出版し、作家デビュー。2024年には初のマダミス作品「医者か死神か」を発表した。現役医師ならではの知見や視点を物語に取り入れ、ノベライズ版「四者の告白」やスピンオフ短編も執筆。文学フリマ東京への出展など、創作活動の幅を広げている。最新作はマダミス「死者は記憶で蘇る」(寺澤伸洋氏との合作)。


本の虫だった、小学生時代

――本日はよろしくお願いします。小学生の頃からかなり本を読んでいたとのことですが、当時どんなものを読んでいましたか?

青い鳥文庫と海外のファンタジー作品が大好きでした。

青い鳥文庫では倉橋燿子さんの作品が特に好きで、「青い天使」や「いちご」など、自分と同年代の女の子が主人公のシリーズを夢中で読んでいました。

海外ファンタジーは定番の「ハリー・ポッター」や「ダレン・シャン」にどハマり。恥ずかしながら、自分でもファンタジーっぽい長編小説をノートに書いて友達に読ませていました。本当に今思い出しても恥ずかしいです(笑)

漫画は自分では買いませんでしたが、兄達のお下がりで偉人の伝記や歴史などの学習漫画を読み漁っていた他、「ブラックジャック」や「火の鳥」なども借りて読んでました。

自己紹介の肩書

――ナズナさんは肩書きがたくさんありますが、普段、ご自身ではどう自己紹介されていますか?

まずは「本職は医者です」と言っています。フリーランスにはなりましたけど、やはり「医師」という専門職であることが自分の誇り、大事なアイデンティティになっているのだと思います。

最初のうちは、「kindle作家、翻訳家、マダミス作家もやっています」と続けていました。タグが多すぎて「具がゴロゴロ入ってるカレーみたい」なんて言われたことも(笑)

2025年3月に大本命本のエッセイをkindle出版してから「もう書きたいことは全部出し切った。今後はマダミス制作に注力しよう」と思うようになり、自己紹介でもシンプルに「フリーランスの医師×マダミス作家」と提示するようになりました。

マダミス(マーダーミステリー)とは:参加者が物語の登場人物になりきり、その中に紛れた犯人を推理していく体験型のゲーム。詳しくは最終回で触れています。

「目指すんだったらいいところ」理三を選んだ理由

――お父様が医師だったことが医学部を志したきっかけだと伺いました。医者になるだけなら東京大学の理科三類である必要はないと思いますが、なぜあえて東大理三を目指したんですか?

端的に言ってしまうと、勉強ができたからです。

なぜか分からないけど、子どもの頃から勉強が好きでした。兄達が「勉強しなさい」と親に言われている横で、自発的に勉強している子どもでした。

小学校は高校までエスカレーター式で上がれる私立だったのですが、何となく通い始めた塾での受験勉強が楽しかったので中学受験して、別の私立女子校に進学。

中学に上がると、これまた何となく通い始めた塾が自分に合っていて、数学と英語に特に夢中になりました。新しいことを学び、できることが増えていくのが純粋に面白かったのと同時に、点取りゲームの競争にものめり込んでいきました。

勉強ができるから東大理三

塾が「東大専門」みたいなところだったので、理系の最高峰である東大理三を目指すようになるのはほぼ必然的でした。

ということで、「父の背中を見て自分も医者になることに決めた」のもあるにはあるのですが、「医学部の中から東大を選んだ」のではなく「勉強ができるから東大理三を目指した、そのまま医学部に進学して医者になった」というのが実情です。

東大理三にはそんな感じで医者になってしまう人がたくさんいます。というより、ほとんどがそうだと思います。その良し悪しはさておき。

中学の時からの親友とのお茶会

自分は「凡人」

――実際に東大理三に入学してみてどうでしたか?

東大生は本当に突き抜けて頭のいい人が多くて。「私なんかちょっと勉強ができるだけの凡人だな」と思い知らされました。同じように感じる東大生は多いと思います。

好きでやっていたとはいえ長らく受験勉強漬けになっていたので、その反動で入学後は自由なキャンパスライフを謳歌しました。

東大には「進振り」という制度があり、教養学部時代(1年〜2年の前期)の成績で進学する学部が振り分けられます。理三は普通に単位さえ取っていれば医学部に行けるので、選択授業は点数の取りやすさではなく純粋な興味で選んでいました。

カリキュラムや勉強内容が決まっていた高校までと違い、大学では何を学ぶか、どう過ごすかも自分次第。サボろうと思えばいくらでもサボれる環境では自分を律するのが大変な気がします。

大学の卒業式

医師国家試験の難易度

――医師国家試験の難易度を私たちにもわかるように言うと、どのくらいの難易度ですか?

国試は実は全然難しくありません。9割が合格する試験です。

しかも「これさえやっておけばいい」という専用のビデオ講座や問題集があるので、それで普通に勉強していれば受かります。

医師免許を取ってからがスタート

――そもそも「医者になる」って、どこからがスタートなんでしょう?

国試に合格して医師免許を取ったら医者人生のスタートです。

医者になってからのキャリアは、ざっくり言うと下のような流れになります。

初期研修の2年間は漫画「ブラックジャックによろしく」でも描かれていますね。時代がだいぶ古いのと、「こんなやばい研修医いないだろ」という感じですが(笑)

今は病院でも働き方改革が進み、初期研修医は残業が制限されていたり、当直明けは早く帰れたりと、ホワイト化しつつあります。

医局に入る?入らない?

初期研修では1-2ヶ月ごとに色々な科を回って勉強させていただき、2年目の夏くらいには専門の科を決めます。

大学の医局に入る場合は入局試験を受けにいき、医局に入らない場合は3年目以降どの病院で後期研修を受けるか決めて入職試験を受けにいきます。

科によって後期研修の期間や条件が異なりますが、大体3-4年かけて専門医取得を目指します。

専門医を取ったあとの進路はさまざまです。そのまま臨床の現場で腕を磨く人、大学院に進学して研究に従事する人。

ここで説明してきたのはいわゆる「お医者さん」としての一般的なキャリアですが、中には製薬会社などにコンサルとして就職する人もいますし、自分で起業するツワモノもいます。かなりレアケースですが。

編集後記

日本最難関と言われる理科三類を目指した理由を伺ったとき、返ってきたのは「なんであんなに勉強が好きだったのか、わかんないんですけど」という一言でした。

野心や使命感ではなく、勉強が好きだから、どうせなら高いところへ。努力を努力と思っていない人の雰囲気が漂っていました。

印象に残ったのは、その理三に受かったナズナさんが、自分を「凡人」と言い切ったことです。謙遜ではなく本音に聞こえました。

上には上がいることを見てきた人の実感なのだと思います。この感覚が、肩書きにこだわらず道を変えていく事に繋がっているのだなと思いました。

(探究ゼミ:相木)

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