【第3回】売上406億への急成長を支えたSNSPR戦略と、タカラトミーアーツが守り抜く“回す”アナログの価値とデジタル時代にあえて“リアルなモノ”を作る意義

スマホの画面をスクロールする一瞬。ガチャマシンの前を通り過ぎる一瞬。 現代のエンターテインメントは、その「わずか数秒」の関心をいかに掴むかの戦いといっても過言ではありません。

連載第3回となる今回は、タカラトミーアーツの急成長を支える情報発信や今後の展望に迫ります。

後半では、デジタルの波が押し寄せる中で、なぜ同社が「ハンドルを回す」というアナログな体験にこだわり続けるのか。そこには、効率や利便性だけでは語れない、ガチャ®という文化の核がありました。

\お話を伺った方/
田邊愛海さん:ガチャ・キャンディ事業部 ガチャ企画部企画1課 主任 
中村佑子さん:メディア部 事業企画部広報宣伝課 課長
西北洋子さん:メディア部 事業企画部広報宣伝課 上級主任

次回:【第2回】売上400億超!タカラトミーアーツが明かすガチャ®躍進の裏側と、自社マシンが生む強み(仮)

SNSを利用したPR戦略

ーーSNSを通してより多くの人に見てもらうために工夫していることを教えてください。 ‎

SNSはガチャ売り場と同じように、一瞬でユーザーの関心が流れていく世界です。だからこそ、その一瞬で目に留まるように工夫しています。

POPのデザインを投稿することもありますが、一目でかわいいと思ってもらえるような投稿や文章になるよう工夫しています。

長い説明文よりも、絵文字や記号を交えた短いキャッチーな言葉を使い、ビジュアルの一部のように文字を配置して、見て楽しい投稿を作りたいと思っています。 ‎

大体3分くらいでパッと投稿を考えて、少し直して、半日以内に完成させることが多いです。 リズム感やキャッチーな言葉などを思いついた新鮮な言葉を一旦形にしつつ、少し間をおいて冷静に判断することを大事にしています。

炎上対策のための言葉選び

ーーSNSで発信する上で心がけていることを教えてください。

キャッチーな言葉でありつつも、誤解を生まないようにしています。

短い文章でキャッチーで刺激ある文章はバズりやすいと思いますが、過激な言葉遣いで商品紹介をしても何もいいことはないと思います。

わかりやすさを重視しつつも商品の魅力を正確に伝えられるように文章を組み立てるよう心がけています。

中村:キャッチーな言葉でもいろんな意味で捉えられることがあるので、広報の方では、誰が見ても不快に感じない表現ができているかという視点で常に確認しています。

具体的には、マーケティングチームの方3名と各担当者が文章を考えたり、マーケチームが考えたものを企画担当者が見て直したりしています。

広報の方にもチェックしてもらっているので、チームとしては7〜8人くらいでチェックしている感じです。

近年の売上動向と成長要因

ーータカラトミーアーツのサイトにある注目度ランキングはどう統計しているのでしょうか? ‎

中村:前日のアクセス数が反映されるようになっています。新商品の入れ替わりと、SNSで話題なった商品などは一気にアクセスが増え、ランキングも上位にくるなど、わりと変動が激しいランキングとなります。

ーーカプセルトイに入っているミニパンフレットのアンケートはどう反映されていますか? ‎
アンケートはしっかり見ています。アンケート結果は発売してから2〜3ヶ月後に営業の方からまとめたものをいただきます。

うれしいコメントに元気ややる気をいただくこともあれば、ご満足いただけなかったご意見もしっかりと受け止め次回以降の参考にさせていただいております。

売上高406億円の要因

ーータカラトミーアーツの売上高が2022年の290億円から2024年の406億円と急激に伸びている要因は何だと思いますか? ‎

中村:こちらの要因に関しての明確な理由は申し上げられませんが、おそらく2022年度はコロナのピーク時から落ち着きを取り戻し、世の中に人流が戻ってたことも一つ理由にあるような気がします。

また、ガチャ以外の要因もあります。ガチャ市場自体も業界全体として伸びており、当社のガチャの売上も右肩上がり伸長したことももちろん影響していると思いますが、当社のガチャ以外の事業である、アミューズメント事業、ぬいぐるみ事業も同様に伸びており、これらの要因が総合的に影響していると思います。 ‎

ガチャも推し活文化の仲間に

ーー推し活文化が広がっている中で、推し活文化とガチャの成長にはどのような相関があると考えていますか? ‎

相関はもちろんすごくあると思います。推し活文化は3〜4年前から盛り上がり、最近は定着している感覚があります。

一過性のブームで終わらず、誰かを応援したり、何かを好きな気持ちを表明したりすることが文化として定着しているように思います。

推し活文化が広がって、可愛いものを持つことやぬいぐるみを持つことが広がったことで、今後、ガチャも一緒に盛り上がっていけたらと思っています。

中村:また、推しのぬいぐるみなどを自然に持ち歩ける時代の中で、ガチャは撮影小物としても活用されています。推しのぬいぐるみがちっちゃいサイズのお菓子を持っているという撮影の組み合わせなど、推し活文化とともに一緒に存在していけるので、とても相性がいいと感じています。

「好きなもの」に年齢・性別は関係ない!

ーー今後ガチャを通じて、ユーザーに届けたいことを教えてください。 ‎

可愛いものや面白いユニークなものを、子供も大人も関わらず誰でも持っていいんだよ、誰でも好きで身につけていいんだよと後押しする入口になれたらいいなと思っています。

今は大人も子供も、男女問わず可愛いものを持ったり、好きだと言えるような空気が広がってきているように感じており、とても良い流れだと思います。手頃なガチャを足掛かりとして日常に癒しやときめくものを置いたり持つことが広がっていけばいいなと思いながら制作しています。

また、友達とのコミュニケーションツールとしての役割も果たせたらと思っています。ガチャはネット通販と違って、実際に店舗や場所があります。そこに行って回して手に取るという体験ができます。

ガチャをきっかけにして会話が弾んだり、仲良くなったり、外に行って発見したりするような、単なるおもちゃではなく、話題や会話が生まれるツールになればいいなと思っています。

ガチャとデジタルの融合

ーー現在、ガチャガチャは「モノ」としての魅力が強いですが、今後、デジタルとの融合については考えていますか?

デジタルとの融合には様々な形があります。例えば、以前には「ARガチャ」を実施していました。

中村:「ARガチャ」とは、回したガチャの中に入っているパンフレットや商品に記載されているQRコードをスマホで読み取り、専用アプリを通してアプリ内カメラを起動させるとカメラ越しにキャラクターが現れ、一緒に写真を撮れるというものでした。

ただ、ARなどの技術はどんどん進化していて、今ではスマホがあれば気軽にAR体験が可能になりました。さらにはVRなど新たな技術が登場しており、当時のARガチャは大きく広げることができずという形となってしまいました。

https://www.takaratomy-arts.co.jp/items/item.html?n=Y813436

リアルな「モノ」だから味わえること

ーーデジタルとの融合で難しい点はありますか? ‎

中村:デジタルは形のないモノですが、ガチャは手元に残るモノです。その性質の違いが大きな課題です。

同じお金を使うにしても、「デジタル体験に使う」のか「実際に手に入るモノ」に使うのか。その価値の感じ方には人によって違いがあります。うまく融合できれば面白いものができると思いますが、なかなか難しいところではありますね。 ‎

ーーデジタルと融合しても残したい要素はありますか?

どれだけデジタル化が進んでも、ガチャはモノを大切にする文化です。だからこそ、「実際に回す」「リアルに手に入れる」といったガチャならではの特徴は残したいと思います。

デジタル技術を取り入れて進化することはあっても、リアルでしか味わえないワクワクする体験は守っていきたいです。

デジタル化に負けないガチャの魅力

ーー先ほどリアルなガチャの体験を残していきたいとおっしゃっていましたが、他にもガチャで残していきたい要素はありますか?

やはり、ハンドルを回して「ガチャ」っと音が鳴り、カプセルが「ゴロン」と出てくるあのギミックは、ずっと残してほしいと思います。

最近はボタン式のマシンもありますが、ハンドルはガチャの象徴的な部分です。ガチャという言葉の語源にもなっている部分ですから、どれだけマシンが進化してもハンドルは残したいですね。

また、個人的にはフィギュアが好きなので、ワンコインで立体物が出てくるという夢のある仕組みも大切にしたいです。

コレだけは残したいガチャの

ーー中村さんと西北さんが考える、ガチャで残していきたい要素は何ですか? ‎

中村:自販機はボタンを押すだけで商品が出てきますが、ガチャはお金を入れる瞬間からハンドルを回すまでの全ての過程に「何が出るかな」というワクワク感があります。

回してから手に取るまで結果がわからない。そのドキドキこそがガチャならではの魅力です。

自分が出会ったタイミングで商品を選び、自分の手でハンドルを回すので、その結果がどうなるのかは、何にも影響されない自分で選んだ運でもあるので、それを「ガチャを回す」というアクションで体験できるのはなかなか面白いことだなと思っています。

自らの運命を受け入れる、大げさに言うと人生が凝縮されているような体験ともいえるので、この部分は残したいと思っています。 ‎

ーー最近はデジタルガチャやオンラインクレーンなども増えていますが、アナログの体験の価値をどう考えますか?

西北:アナログであるガチャには、ハンドルに手で触れる感覚や「ガチャ」っという音、その場で手に取る体験といった魅力があります。こうした五感で感じる体験は、どれだけデジタル化が進んでも残っていってほしいと思います。

最終的にモノを手に入れるという結果は同じでも、その場で友達と「当たった」「当たらなかった」と話しながら盛り上がる時間も含めて、ガチャの価値だと思います。

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