起業失敗から学んで、飲食店経営を成功させたワケ #3
20兆を超える日本の外食産業。
コロナで落ち込んだとはいえ、以前大きな産業に変わりありません。
小さいことから外食してたわけで、ある意味お客のプロ。
身近な割には知らない外食の経営の話。
本人の言葉を借りれば、"ある程度"成功した飲食経営者のリアルな話。
第3回は、飲食店の成功の超具体的なコツと仕事に対する情熱を語ってもらいました。
【高橋幸佑(たかはしこうすけ )】ラーメン店マネージャー。大学卒業後、ディズニーホテルに就職。25歳でラーメン店、カフェを作るも閉店。イタリアンや中華で修行をしながら、鶏白湯スープに出会い再起を決める。現在は埼玉県の浦和と大宮で鶏白湯ラーメン店を運営している。
美味しいだけじゃ飲食店は成功しない
ー現在経営している店舗は2店舗目を出店するなど順調そうですが、その要因は何だと思いますか?
最初の起業と逆のことをしているからです笑
起業したばかりの自分は、味さえ良ければ売上が伸びると思っていましたが、この考え方が失敗の元だと今なら分かります。
ーもう少し具体的に教えてもらってもいいですか...?🙏
言い換えると、職人的に美味しいラーメンを追求するだけではなく、経営者視点でどうやったらお店が繁盛するか考えるようになりました。
具体的に言うと、
- 原価と提供価格のバランスを考える
- 自分が作りたいものではなく、お客さんが求めてるものを考える
- デパートの物産展、ランチタイムを狙った移動販売、イベントへの出展など、お店の外でも販売する方法を考える
- 全部自分でやろうとせずに、どんどん人に任せていく
- 他のラーメン屋や飲食店の経営者の話を聞きにいく
- 一発大ヒットを狙うのではなく、長期で続けてチャンスを逃さないようにする
- SNSや雑誌の取材など、見つけてもらう取り組みをする
ざっくり言うとこんな感じです。
過去の自分の失敗を受け入れて、改善したからこそ上手くいっているんだと思います。
ー素人考えだと美味しければ飲食店は繁盛しそうですが、それだけじゃダメなんですか?
美味しいだけではダメです。
すごい美味しいのに1店舗しかないお店はたくさんあります。
こだわって1店舗してるならいいのですが、もっといろんな人に広めたいと考えているなら工夫が必要です。
実現の為には実力はもちろん、人に目に付きやすい場所に店舗があるか、メディア露出出来るコンセプトがあるのか、さらには社員の働きやすさも重要になります。
さらに、運も必要です。
ー運を引き寄せる...難しそうですね。
1人では無理でも、仲間が集まることでその可能性がひらきます。
これから取り組みたいプロジェクトの1つに、地域のラーメン店の経営者のを集めて話し合える場所を作りたいと考えています。
互いの経営課題を相談し合ったり、他店とコラボして商品企画をしたり、「共に助け合う」仕組みを作りたい。
運を言い換えれば人柄と人脈です。仲間を作って助け合うことで、結果として良い流れが生まれてきます。
やりたいんじゃなく、たまたまできただけ
ー学生のころから自分の意志を貫いて今があるのか、それとも社会人になって意識して進んできたんですか?
意志も意識もありません。
高校生の時に、たまたま近くのラーメン屋でアルバイトを始めただけで、ラーメン屋になりたいとは全く思っていませんでした。
本当はずっと辞めたかったけど店長が怖すぎて言えず、3年が経ち、どんどん古株になってしまいました。
経験があるから頼られる、そんでラーメンの作り方から経営まで関わるようになっただけです。
起業にしても、経験があったからラーメン起業しただけ。「俺はどうしてもラーメン屋になるんだ!」みたいな気持ちはありません。
たまたま生きてきた道で、ラーメンという選択肢しかなかっただけです。
–強い意志っていうより「縁」でここまできた?
はい、縁ですね。
流れでここまで来て、この世界から逃げられなくなりました笑
関わるひと全員を笑顔に
–高橋さんがいま情熱を持ってるところはどこですか?
お客様と従業員の笑顔です。
これまでの飲食業界は、お客様が美味しいと笑顔で喜んでくれることだけにフォーカスされていました。
しかしその笑顔は、長く大変な環境で働いている従業員の存在の上に成り立っています。
自分も長時間労働を経験して、その中でサービスの質を上げていくことに限界を感じました。従業員が笑顔ではないのに、お客様を笑顔にすることはできない。
お客様ファーストでありつつ、従業員が未来に対して希望を持って働ける環境を作る
これがいまの情熱です。
収入を増やしたいと従業員が思った時には、それを叶えてあげられるポジションを提案できるように。
独立したいと思った時は「この店で挑戦してみない?」と提案ができるようにしたいです。
この情熱を大事にしながら、これから作っていきます。
現状に満足しつつも、新しいことに挑戦する
ー高橋さんは今の仕事や生活には満足してますか?
環境も収入もすごく満足してます。今まで頑張ってきて、本当に良かったです。
マネージャーになって、ラーメンを作る以外のこともできるようになり、新しいもの好きの性格を活かせています。
今の環境や時間があることで、個人のお客様だけでなく法人のお客様と関わる機会が多くなりました。
ー高橋さんがこれからやってみたいことはどんなことですか?
2つあります。
1つは、個人店で店舗拡大を考えている飲食店同士での「共に助け合う」仕組みづくり。
2つ目は、ラーメン専用の自動販売機を作ったり、ECサイトを使ってラーメンや餃子を全国のお客様に届ける事業。
現場以外の世界で、自分が今まで知らなかったことを日々学びながら、これからを過ごしていきたいです。
次回
高橋さんインタビューまとめ
[編集:吉中智哉 / 取材協力:高橋エリー]