実は大学の先生も就活してる?!教員のなり方と研究者に求められる資質 #4
前回は、埼玉大学の音声のスペシャリスト、杉浦先生がこれからやりたいことを伺いました。
自己表現をしたい!自己表現したい人をサポートしたい、そんな思いが伝わってくるお話しでした。
>>#3「ご近所の騒音問題をなくしたい!」音の研究者が語るこれからの夢
今回は職業としての大学教員について掘り下げて行きます。
先生!大学の先生ってどうやったらなれるんですか?!
【杉浦陽介(すぎうら ようすけ)】工学博士。埼玉大学 大学院理工学研究科助教。大阪大学工学部卒業、同大学博士課程修了。東京理科大学基礎工学部の助教を経て現職へ至る。専門はAI技術を使った音声認識や雑音除去、声質変換の研究
能力も大事だけど、人間関係も超重要
-大学教員のような研究職に憧れている学生も多いと思いますが、アドバイスや助言があればお願いします。
そうですね。研究者になる道って本当に色々あると思います。僕はたまたまアカデミックな道に運良く入れたので、すごい良かったっていうのもあります。
企業の研究所とかに勤めながら開発される方もいらっしゃいると思いますが、全然詳しくないので、大学でキャリアを積んでいく上での話をさせてもらいます。
-ぜひお願いします。
実は研究と関係ないんですけど、人間関係めっちゃ大事です、結局。
なんとも面白い世界で、この世界って。
もちろん実力主義な部分もあります。論文何本書かないと上には登れない、優秀な成績残さないと上には上がれないっていう仕組みもありますが、同時にすごく狭い世界で、信頼関係で成り立ってるところがあります。
なので人間関係にめちゃくちゃ大事になってきます。
実際僕が東京理科大に行った理由も、「ちょっと応募してみない?」みたいな感じで理科大の先生に声かけていただいたのがきっかけでした。
やっぱり信頼される方が入ってこないと、大学側も怖いっていうのもあると思います。そういうのもあって、信頼できる方に声をかけて、採用を手伝うみたいな仕組みもあるみたいです。
そういう意味で、大学でのキャリアを目指すなら人間関係がすごく重要になってきます。いろんな方と繋がりを持って、自分を売っていくっていうのが、何よりも大事です。
-その声かけてくれた理科大の先生とはもともとお知り合いだったんですか?
そうですね、もともと。学生の頃から仲良くさせてもらっていました。
-大学時代の先生とかそういうわけでもなく、たまたま知り合った人に?
そうです。似てる研究分野だったのでたまたま知り合って。研究の話をしたり、飲み会で色々と話したりしてるうちに、仲良くなっていきました。
-自分の研究をするだけじゃなくて、ちゃんと外の人ともコミュニケーションとっていた。
はい。僕は学生の頃から、先生について行っていろんな飲み会参加していました笑
-大学の先生ってコミュ力高い方があんまりいないイメージなので。杉浦先生みたいな方は珍しい印象です。
大学教員はまたこれ特殊で、コミュニケーション能力はあんまり必要ないんです。
ある意味、先生全員コミュ力ありません。みんな好きなこと語って終わるみたいな会もあります。
でもみんなそれで満足なんですよね。「お互いの腹が知れてよかったね」で終わったりします。ヲタクの集まりみたいな感じです、イメージとしては。
みんな自分の好きを話して、テンション上がっちゃって楽しい!みたいな感じ。
そういう空気があるので、コミュ力というよりは、自分をどれだけ出せるか、自分はこういうことしたい、こういうことに興味ある、ってことを周りにキチンと伝えることが大事。
人に興味がある、物に興味がある、っていうのを出していくのがすごい重要かなと思います。
大学教員の就活事情
–大学の先生って経歴みると色々な大学を遍歴されてるじゃないですか、あれってどういう仕組みになってるんですか?
大学の先生になるためには、まず博士の資格が必要です。大学に4年間通って卒業した後に、大学院2年に行くと修士、さらにその後に行くのが博士課程です。
通常博士課程に3年間通って、そこで修了要件を満たして、ようやく博士号が取れます。その博士号の資格があると、大学教員になるチャンスがようやく巡って来ます。
そこから大学教員になるにはどうすればいいかというと、まずは席が空いてるかどうかが重要になってきます。基本的には椅子取りゲームです。
–ポストに空きがあるか?ってやつですね。
そうです。
文科省によって、学生数に対して先生の数何人ってのが決まっています。特に国立は厳しいですが、たまたま空きがあればそこに座れる形になってます。
なので、全国、なんなら世界も見て「どこか席が空いてないかな?」って探した上で応募していきます。
自分が卒業した大学に教員として就職するっていうのは、レアかもしれないですね。
–大学が教員募集の求人をだしていて、そこに応募していく感じですか?
そうです。
–例えば、杉浦先生は以前理科大で働いていて今は埼玉大学ですが、なにか大学変えようってタイミングあったのか?それとも任期的な何かですか?
東京理科大は、4年任期という仕組みになっていて、4年後は必ず外に出なきゃいけない約束になっていました。
昇進するっていう手もあるんですが、昇進はなかなかレアで、そのまま外に出るケースが結構多いですね。
僕の場合、東京理科大で2年目の時に、たまたま埼玉大学のポストの話を聞いて、せっかくだからチャレンジしようっていうところで応募しました。それが、現在所属している島村徹也教授の研究室です。
–そうなんですね!大学の先生の経歴みるといろんな大学に所属していて、不思議だったんですが、そういう理由があったんですね!
そうなんです。実は任期っていうのがあって、そもそも長く務めるのが実はあんまり良くないという空気があります。
–任期がある理由は、色んな人が混ざった方がいいみたいな、学際的な理由ですか?
研究的な意味でもそうですし、大学を運営する上で、同じ人が続けられると、凝り固まっちゃうというか、それこそ派閥というのができてしまったり、あまり良くない流れができるんじゃないかってのが理由だと考えられます。
–ということは、長く勤めてる方はよっぽどって感じですか?
よっぽど優秀な方なんでしょうね笑
次回
杉浦先生インタビューまとめ
[編集:吉中智哉 / 撮影:高橋エリー]