#2 イギリスのモバイル企業がやってる日本のNPO法人って何?寄付金の使い方からNGOとの違いまでガッツリ聞いてみた

マラウイへ給食支援をしている「せいぼじゃぱん」には、実は母体となる団体があります。

それが、食糧メーカーでもなく、福祉慈善系の会社でもなく、なんとイギリスの通信会社。

なぜ英国の通信会社が日本のNPO法人を運営しているのか?NPOとNGOの違いも含めて、「せいぼじゃぱん」の本質に迫りました!

【せいぼじゃぱん 山田 真人】

上智大学を卒業後、英国の通信会社モベルコミュニケーションズに入社。会社員として働きつつ、NPO法人「せいぼじゃぱん」を設立。

「せいぼじゃぱん」理事として、アフリカのマラウイにて子どもたちに給食を提供する事業をおこなっている。

せいぼじゃぱんの寄付金の使い方

ーー現地の活動は現地の人たちがやっていると聞きましたが、NPO法人せいぼじゃぱんの日本国内での活動を教えてください。

財務的な観点から言うと、ファンドレイジング(資金調達)が98%くらいを占めていると思います。

自動的にお金が入るようになれば、人件費をゼロにすることは可能かもしれません。だとしても、世の中は変わっていく訳です。

世の中の変化に対応していくためにも、コーヒーやストーリーをアップデートする広報の仕事は、半永久的に必要なんじゃないかと思います。

寄付金は”ほぼ”100%支援へ

ーー寄付金の”ほぼ”100%を支援に使ってると聞きました。100%ではなく”ほぼ”100%とはどういうことですか?

理由は送金手数料です。送金手数料は送金した通帳から出て行ってしまうので、純粋に100%にはなり得ないという制度上の話です。

方針として基本100%支援金に回していて、そのうち一部がやむを得ず送金手数料に回るので「ほぼ」100%という表現になります。

団体ではキャッシュカードのついていない、つまり物理的に引き出すことのできない寄付専用の通帳を用意しています。寄付金は全てマラウイの給食事業に使うというのが団体の方針です。

イギリスの通信会社のチャリティー団体

ーー寄付金をほぼ全額支援金にする仕組みで法人としての経営は成り立ちますか?

モベル*グループのWebサイトを見ていただけると分かるのですが、せいぼじゃぱんは、モベルグループ内のチャリティー団体という位置付けです。

ですので、自社内のファンドでチャリティー団体を作っていくという感じです。そこが経営学的に面白い観点だと、個人的には思っています。

the majority of our profits go to charity(*編集注「利益の大部分を慈善事業へ」)という、代表のトニー・スミスの方針があります。

2000年くらいからチャレンジを始めて、その時点で方針が合わない、嫌だと感じる人は辞めていいよって代表は言ったんですけど、誰もそのとき辞めなかったというすごい話もあります。

モベル会社概要 https://www.mobell.com/

本当であれば、寄付金を全額支援に回さずに給料を上げる事も可能ですが、マラウイとの出会いをきっかけにこの活動が始まった縁もあって、モベルグループ全体として寄付全額を支援に回すことを許容している感じです。

それまではトニーの個人資産でやってたということが後々になって判明したんですけど(笑)

仕事の9割はチャリティー事業

ーー山田さんご自身の食糧支援と団体の広報の仕事のバランスはどうなっていますか?

団体全体で考えると、本質的な食糧支援は100%マラウイのスタッフが担っています。広報をやっているのは、今のところ私だけです。

日本での自分の仕事としては、ファンドレイジングを含む、広い意味での広報活動になります。

もちろん、私も実際にマラウイに行って、現地で学校給食を提供することもあります。でも、食材の仕入れから給食を提供していくプロセスを実行しているのは、やはり現地の人です。

チャリティーとビジネスの比率に関して、私の仕事の内9:1くらいでチャリティーに力を注いでいます。もし今後、会社の売り上げが悪化してしまったら、私はビジネスの仕事を増やさなくてはいけません。

とはいっても、私はビジネスをやることに決して否定的なわけではなくて、むしろ個人的にはビジネスは楽しいし、何でも売れるんじゃないかっていう変な根拠のない自信もあるくらいです。

それは、私個人に限った話ではなくて、会社としても、商品を売ることに関して自信があるんじゃないかと思っています。

寄付金を全額支援金に回すのは、会社の企業文化としての方針として社内全体に共有されています。

\コーヒーを買ってマラウイの給食支援! /

せいぼじゃぱんでは、おいしいコーヒーを通したマラウイの給食事業の支援を行っています。

以下のサイトからコーヒーを購入すると、その購入金額の"100%"が支援に充てられます。

気軽な寄付として、ぜひご活用ください!

国連WFP(世界食糧計画)との支援の違い

ーー食糧支援という点では、WFP(世界食糧計画)と似ている部分がありますが違いはありますか?

WFPとの違いは、NPOとNGOの性格や仕組みの違いだと思っています。NPOとNGOの違いについて、強調すべき点は、NPOが非営利だということです。

性格的な側面で、WFPのサイトには「政府は国連WFPの主要なパートナー」と書かれています。この1文に、NGOらしさが出ていると思います。

WFP https://ja.wfp.org/

つまり、NGOは政府外にあるけれど、政府との連携を取っていく政府のアドバイザー的な位置付けなんです。

一方で、その対象領域にも含まれないような第3セクターにも踏み込んでいく点がNPOせいぼの強みであり、WFPとの違いだと思います。

運営の仕組みもかなり異なっていて、WFPは国連の諮問機関にあたるので、国連から報酬を得ています。

したがって国連から評価してもらうために、国連に活動のレポートを送るといったような仕事が発生するわけです。そうなると必然的に寄付金を100%支援に回すことは困難になります。

これらの性格や仕組みの違いから寄付において担う役割も異なっている部分があります。

NGOができることNPOができること

WFPは、団体自体の規模が大きいので、規模の大きな寄付をすることができます。そのため、助けが必要な人の大部分、マスの部分に支援を届けることが出来ます。一方で、同時に多額の人件費がかかるわけです。

NPOせいぼじゃぱんは、マスというよりはむしろミクロ、つまり食糧を必要としている人の目の前まで実際に食糧を届けに行くようなイメージです。

マスとミクロの間を取った人として、緒方貞子さんがいます。私はすごく尊敬しています。

1991年に湾岸戦争が起きた際、多くのクルド人を中心とした難民が、イラク軍から逃れるためにトルコの国境に避難したんです。でも、トルコ政府は入国を認めず支援をしなかった。

そこで緒方さんは当時、国内避難民の保護はUNHCRの直接的な任務ではなかったけど、人道的な視点から、UNHCRで難民を支援することに決めました。

このように国際連合というマスにいるけれども、ミクロまでフレキシブルに対応できる日本人がいたというのは非常に重要な事だと思います。

編集後記

せいぼじゃぱんの運営方針や、WFPとの違いなど、とても興味深かったです。

マラウイの人々がおおらかで、多くのことに感動する国民性の話が興味深かったです。
物質的経済的に豊かではなくても、それでも自国から離れずに生活しているのは、感謝や感動の側面があるかもしれないという話もありました。

危機感を持って向上心を持つことはもちろん重要ですが、衣食住揃ってある程度のやりたいことを出来る状況にも、恵まれているという自覚を持つべきだと改めて実感しました。

探究ゼミ2年生メンバーの感想より

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せいぼじゃぱんの支援はこちら👇からどうぞ!

[ 文:渡邊舞 / 編集:はる]

[撮影:梨本和成 / デザイン:松谷萌花 ]

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探究ゼミ編集部
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