#3 【ここが凄いぞ埼玉県】JRおおみや 鉄道ふれあいフェアから鉄道のまち大宮へ:大宮駅開業130年の駅長が語るさいたまの魅力と課題

「さいたまの魅力は?」と聞かれて、スッと答える事ができますか?

東京のベッドタウン、通過駅…そんなイメージ、もしかしたら持っている人もいるかもしれません。しかし、さいたまは大きく変化しているんです!

街づくりを牽引してきたキーパーソン、元大宮駅長であり、現在はさいたま市観光国際協会の会長を務める筑波伸夫さんに、知られざるさいたまの魅力をたっぷり伺いました!

【筑波伸夫さん】

慶應義塾大学経済学部を卒業後、日本国有鉄道(国鉄)に入社。国鉄からJR東日本への移行を現場で経験し、鉄道業界の大きな変革を見届けた。さまざまな業種を経た後、大宮駅駅長に就任。多くのプロジェクトを主導しながらターミナル駅の運営を担った。

現在は、公益社団法人さいたま観光国際協会の会長を務めるほか、株式会社JR東日本アイステイションズの代表取締役社長として、新しい鉄道サービスの展開や観光振興に注力している。

大宮駅開業130年とチーム大宮

ーーJRグループの社長業に加え、さいたま市観光国際協会の会長も務められているとのことですが、その経緯をお聞かせください。

大宮駅開業130周年記念式典の開催などを通して、地域への貢献意欲が一層高まりました。

そこで、大宮駅周辺の商業施設であるそごうや高島屋、そして商店街の皆様にお声がけし、「チーム大宮」という団体を設立いたしました。駅周辺の魅力を高めるため、チーム大宮で情報共有を図り、協力できることから着手いたしました。

 

大宮工場祭りから鉄道ふれあいフェアへ

「共に地域を盛り上げよう」という機運が高まったきっかけは、大宮の工場で年に一度開催されていた「JRおおみや鉄道ふれあいフェア(通称:工場祭)」でした。

2日間で約6万人もの来場者があるイベントでしたが、せっかく多くの方にお越しいただいても、工場祭だけを見て帰ってしまう状況を勿体ないと感じていました。

そこで、工場祭の開催に合わせて、「鉄道のまち」としての魅力を発信する企画を市に提案いたしました。

2024年10月24日付JR東日本プレスリリース

その結果、市のご協力も得られ、駅周辺の道路を封鎖してイベントを開催したり、様々な催し物を展開できるようになりました。

そして、名称も改め、工場祭の来場者に駅や地元の魅力をより深く感じていただけるよう、現在の「鉄道のまち大宮 鉄道ふれあいフェア」へと発展したのです。

【名称の変遷】

大宮工場祭 →JRおおみや 鉄道ふれあいフェア →鉄道のまち大宮 鉄道ふれあいフェア

さいたま観光国際協会の会長就任

それを機に、何か連携できることがあるのではないかと考え、関係者と駅の会議室で月1回の打ち合わせを行うことにいたしました。

当初は議題もなく、互いに情報を共有するだけでしたが、次第に年末年始のイベントやお祭りを企画するようになりました。地元を活性化したいという思いは、皆共通です。その中で、駅長という立場は、関係者をまとめる上で適任だと感じています。

2019年に入り、さいたま市長から「お願いがあるのですが、観光協会の会長になっていただけませんか」と打診がありました。

駅長の立場で観光協会の会員兼理事を務めていたため、協会の役割は理解していました。会長就任には驚きましたが、地元の活性化に繋がるのであればと思い、お引き受けすることにいたしました。

もちろん、JR東日本にも確認を取り、許可を得ています。(笑)

さいたま観光国際協会HP(https://stib.jp/)より

さいたま市の魅力と課題

ーーさいたま市が現在抱えている観光課題と、その魅力を教えてください。

さいたま市は現在も人口が増加傾向にあります。そのため、観光産業によって地域を成長させるという地方都市とは、状況がやや異なると考えています。

地方都市では、産業が乏しく、特産物やサービスを通じて観光を発展させるケースもあるかと思います。しかし、さいたま市の場合は、来訪者の方々に消費を促すように、いかにさいたまの魅力をより多くの方々に知っていただくための工夫が重要だと考えています。

例えば、さいたまスーパーアリーナでのイベントに来場されたお客様が、さいたま新都心や大宮、浦和といった周辺地域にも足を運んでいただけるような仕掛けが必要だと考えています。

 

東京ではなく埼玉に宿泊するメリット

今後、インバウンド需要の面からも観光を成長させていく必要があります。観光面では、かつて宿泊施設が少ないという課題がありましたが、現在は大幅に改善されてきていると感じています。

立地的な観点から申し上げますと、東京に宿泊しなくても埼玉で十分だと考えています。東京の宿泊料金は高騰していますし、大宮駅から東京までは約35分でアクセスできます。また、他の地域への移動も、新幹線を利用すれば非常に便利です。

このように交通利便性を考慮すると、交通の拠点となる宿泊エリアとして、さいたま市・埼玉県が広く認知されていくことが望ましいと考えています。

外国人旅行者向けのジャパンレールパスやJRイーストパスを利用すれば、新幹線沿線にどこからでも移動がしやすいため、立地的には優位性があると言えるでしょう。

災害に強い都市、さいたま

さいたまの大きな利点は、強固な岩盤を有し、災害に非常に強いことです。中山道沿いは古くから岩盤が強固であったため、鉄道が敷設されたという経緯があります。そのため、埼玉が極めて災害に強いという点は、もっと積極的に発信していくべきだと考えています。

懸念点としては、河川の氾濫ぐらいです。海なし県として知られる埼玉ですが、河川面積は全国一を誇るため、河川の災害対策は重要な課題であると認識しています。

さいたま市には荒川の氾濫リスクは存在するものの、大宮や浦和といった地域は十分に災害に強いと言えるでしょう。やや話が逸れますが、1923年の関東大震災後、東京から多くの方々が移住してきた歴史があります。

特に浦和や岩槻には多くの方が移り住みました。大宮盆栽村という観光地がありますが、これも東京にいた盆栽業の方々が移住してきたことが起源です。土地や土壌の良さが理由だったと聞いています。

大宮盆栽HP(https://omiyabonsai.jp/)より

万が一、再び東京で大規模な地震が発生した場合、同様の現象が起こる可能性もあると考えています。

災害対策は、被災直後だけでなく、被災後の生活も見据えて講じていく必要があるでしょう。

お祭り文化継承の重要性

観光協会の会長を務める中で、お祭りの文化を継承していくことの重要性を強く認識いたしました。

現在はちょうど世代交代の時期であり、高齢世代から若い世代への文化継承が進められています。しかし、コロナ禍の影響で3年間お祭りが開催できなかったため、お祭りの準備や運営といったノウハウの継承が難しい状況にありました。

100年以上続くお祭りを途絶えさせてしまうのは容易いことですが、それは避けるべきだと考えています。お祭りを含む歴史的な文化遺産を後世に残していくことも、観光協会の重要な役割の一つであると認識しています。

お祭りは、高齢者、働き盛りの世代、子供という三世代が交流する貴重な機会であり、地域のコミュニティを活性化する力を持っています。

特にさいたま市は現在も転入者が増加傾向にあります。新たにさいたま市に移り住んだ方々に地域のことを知っていただくためにも、各種イベントは非常に重要です。

「さいたまは良いところだ」と感じていただければ、自然と地域への愛着が湧いてくるはずです。

 [ 文:若林千紘 / 編集:吉中智哉]

[写真:梨本和成 / デザイン:舩越英資]

 

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