#1 元NHKアナウンサー登坂淳一の学生時代と就職活動 〜 マスコミ志望のキッカケは糸井重里氏とフジテレビジョン?!
私たちが幼い頃にテレビのニュースに出ていたあの登坂アナウンサー。皆さん一度は見たことあると思います!
登坂さんの学生時代って何してたの?
なんでNHKのアナウンサーになったの?
登坂さんの就活を軸に、当時の話をお伺いしました!
【登坂淳一】
法政大学卒業後、1997年にNHKへ入局。インターネット上で「麿」の通称で親しまれるなど、幅広い層からの支持をえる。2018年に同局を退職し、フリーアナウンサーへ転身。
バラエティ番組に多数出演するだけではなく、ブログや各種SNSでの発信、俳優業など、幅広い仕事に挑戦中。
目次
登坂淳一の学生時代
ーー登坂さんの学生時代の話をなかなかお見かけすることはありませんが、どんな大学時代をお過ごしでしたか?
大学時代は、ある政治家の事務所でひたすらアルバイトに励んでいました。4年間ずっとです。アルバイトばかりやっていたので、学びに繋がるようなお話が本当にないんです(笑)
就活時に「学生時代ってなにをやってましたか?」と決まって聞かれると思いますが、周りの学生が「僕はこんなことをやった」、「私はこんなことをやった」と華々しい話をしているのを聞いて驚きましたし、身が狭い思いをしました。
たしかに政治家の事務所で学びがなかったかと言えばそうではありません。
言葉選びは非常にセンシティブだったり、挨拶や立ち居振る舞いといった社会人のコミュニケーションと最低限のマナーの基礎だったり。学生からはなかなか見られない世界を間近で見ることができて、とても勉強になりました。
ただ一方で、「政治家の事務所でバイトしておりまして、電話応対や資金繰りの手伝いをしておりました」と面接で言ってみても...。周りの学生と比べて「自分には何もないな」と感じることが多かったです。
ーー大学で勉強して、バイトして、みたいな生活だった?
そうですね、そういう生活がベースでした。ほぼ毎日アルバイトに行ってて、学生の皮を被ったフリーターのような感覚でした。
就職活動今昔の感
ーー就職活動を始めた時の思い出はありますか?
まず、就活のスタイルが今と全然違います。当時は就活の時期になると、家に電話帳ぐらい分厚い、就活情報誌*が送られてくるんです。
*編集部注:リクルートが創刊した新卒就活情報誌「企業への招待」(後リクルートブック)のこと。これが現在の「リクナビ」へと繋がっている。 |
そこには色んな企業情報が載っているのですが、大学の就職課も今ほど整備されていないので、ひたすら「己でやる」みたいな風潮がありました。
先輩から話を聞いて「コレは絶対やった方がいい」や「コレはやっちゃダメだ!」など、嘘か本当かわからない話を聞いたりして。それこそ都市伝説みたいな話を真に受けていましたね(笑)
今はインターネットもあり、就活の情報が溢れていますよね。膨大な量の情報の取捨選択はしなきゃいけないという別の負担はあると思いますが、情報の扱いに関して言うと、みなさんの方が圧倒的に長けていると思います。
将来の夢も目標もない学生時代
ーー学生時代からアナウンサーになりたいと思っていましたか?
実を言えば、そんなことは全然ないんです。将来の夢も目標も漠然としていました。むしろ学生時代に明確に決まっている人はラッキーだと思います。
僕も就活に直面したから将来について考え出したというだけで、「絶対にこうありたい、こうなりたい、これがしたい!」という意欲や理想像は全くありませんでした。
「東京六大学の野球部出身です!」のような、自分に明確な強みや誇れるモノがあれば良かったかもしれませんが、自分にはそんなものはなかった。
元々陸上部でしたが、もちろんどのスポーツにも言えることだと思いますが、陸上は才能やポテンシャルが顕著に出る世界だと感じていました。上には上がいて、その上がさらにいる世界。
努力でどうにも埋まらない差というものを早目に突きつけられたお陰で、変に夢を見ることもありませんでした。
就活が近づいてきて、ようやく「働くとはなんだろうか」と考え始めました。学生時代に夢や熱中できることに巡り会えた人は、単純に羨ましいです。当時の僕にはありませんでした。
登坂淳一の自己分析
就活を始めた当初は軸や方向性もなかったので、とりあえず自分の好きなことを書き並べてみるところから始めてみました。
「車が好きだから自動車メーカー?であればトヨタ?であれば営業職になるのだろうか?」
「まだ見たことのない未来、この先の社会を拓いていく仕事ってカッコいい。それが出来そうなのは通信系?であればNTT?」
「未来や新しいものを作り出すイメージから、リクルートも面白そう。そういえばこの分厚い情報誌もリクルートから送られてきたな。」
「ちょっとわくわくする感じならSME(ソニー・ミュージック・エンタテインメント)も楽しそう。」
「そういえば、少し前に新しいラジオ局が開局したな。J-WAVEのキャッチコピー「More Music, Less Talk」ってスタイリッシュでカッコいい!」
…こんな思考の流れです。本当に自分の興味のあることから思いつくままに取り留めもなく広げていく、妄想のようなものですね(笑)
やっぱりテレビが好き
そんな思考を繰り返す中で、自分はやはりテレビがとても好きということに気がついたんです。
子供の頃から、ひょうきん族や秋元康さんプロデュースの番組など、フジテレビの黄金時代と共に育ちましたので、テレビやそれに関わる仕事に就きたいと思いました。
更に言うと、当時は広告代理店でコマーシャルを作るのが1番やってみたいことだったように記憶しています。
登坂淳一と広告代理店
テレビを見てると番組と同時にCMも見ると思います。そのCMを作っているのが、電通や博報堂に代表される広告代理店です。
広告代理店の中でも、コピーライターに強い憧れがありました。
糸井重里さんという超有名なコピーライターの方がいます。その糸井重里さんが、1980年代に池袋の西武百貨店向けに作った伝説のコピーがあります。
「じぶん、新発見」
「不思議、大好き。」
「おいしい生活」
これは当時一大ムーブメントとなり、社会現象を引き起こしました。糸井さんの影響で広告業界やコピーライターを目指した当時の学生は僕も含めて多いと思います(笑)
響きの良さや「何だコレ?」という感覚。
商品やブランドのイメージを伝えるのはもちろん、その言葉の響きの奥にもっと広がりがあって、様々な人にたくさんのメッセージを届けるという素敵な仕事だと感じ、憧れを抱きましたね。
フジテレビが、いるよ。
また、当時は民放の各局が自局のCMを作っていました。中でも特に心に残っているのが「フジテレビが、いるよ。」です。
仕事を終えて疲れて帰った人が、1日の終わりに家でテレビを点ける。嫌なことや大変なこともあったけど、ほっと一息ついてテレビを見る。そのCMの最後に「フジテレビが、いるよ。」のコピーが出てくる。
1人で寂しいな、怒られて辛かったなと落ち込んでるんですけど、「いつでも側にフジテレビがいるよ」みたいな感じに寄り添ってくる。
「なんだこのCM!」と思いました!(笑)CMの力というものを初めて感じました。
人に寄り添ったり、ちょっとだけでも元気になってもらいたい。このCMを機にそんな仕事がしてみたいと思って、テレビ局や広告代理店、マスメディアを志望することにしました。
就活で始めたマスコミ対策
ーーマスコミを志望するにあたって何か対策はしましたか?
今現在どうなっているのか分かりませんが、当時はマスコミの入社試験に論文試験がありました。そこで試験対策のため、論文トレーニング塾で勉強をはじめました。
講師は読売新聞や朝日新聞の記者の方々でしたが、毎週テーマを与えられて論文を書くんです。
そこで感じたのが、採点した先生によって評価が全然違うことです。ある先生からはべた褒めされた文章が、別の先生からは酷評されるということが多々ありました。
当時は「一体なんなんだ!」と疑問に思いましたが、この経験を通して、同じニュースや同じ記事でも受け取る側の人の数だけ違う見方があることを学びました。
日々の株価をチェック
ーー就活にあたって他にやっていたことはありますか?
なんとなくやっていたことで、とても役に立ったと感じることは、株価の変動を毎日チェックしたことです。ニュースと株価が連動するということを学べたことは後々ためになりました。
ある飲食チェーンでのイタズラが、翌日の株価に影響する。今でもそんな光景を目にすることがあると思います。
「経済」というと、なんとなく堅苦しくて、捉えどころがない、目に見えないものと忌避してしまいがちです。
しかし、こうして日常の出来事と株価が繋がっているという認識の元で数値を見てみると、ぼんやりとですが、世の中の動きのようなものが朧(おぼろ)げに見えてくるんです。
軒並み株価が上がったり、逆に下がったりする銘柄や業界を見つけたりすると、「何が起きてるのか」と原因を探してみたくなる。興味が湧いてくるんです。
情報を見極めることはなかなか大変ですが、世の中を少し知るキッカケになりました。
次回#2予告
ーー最終的にはNHKのアナウンサーとして採用されるわけですが、その辺の経緯を教えてください。
アナウンサーになりたい人は、大きく2タイプいると思っています。
1つは〇〇と思うタイプ。もう一方は〇〇だと考えているタイプです。僕は完全に後者側でした...
<#2へ続く>
\ 編集部PickUp /
今回インタビューした登坂淳一さんが主演するオリジナルドラマ「スパイめし〜異国グルメ潜入記〜」は、以下の日程で新作が放送されます。
#3【西川口 安老爺編】
2023年11 月 18 日(土)23:30~
#4【鶴見 ユリショップ編】
2023年11 月 25 日(土)23:00~
#5【横須賀 ナウリンズ編】
2023年12 月 2 日(土)23:10~
#6【高田馬場 タウンジーカフェ編】
2023年12 月 9 日(土)23:30~
詳しくはチャンネルNECO「スパイめし〜異国グルメ潜入記〜」特設ページ*をご覧ください。
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*過去シリーズはこちら
[ 文:吉中智哉]
[撮影:梨本和成 / デザイン:舩越英資 ]