【第2回】売れるガチャ®には理由がある!タカラトミーアーツが仕掛ける心を掴む差別化戦略と競合他社へのライバル意識
数え切れないほどのマシンが並び、カラフルなカプセルがひしめき合うカプセルトイ専門店。毎月400種類以上もの新商品が登場するこの「超激戦区」で、私たちの視線はなぜ、特定の商品に吸い寄せられてしまうのでしょうか。
連載第2回となる今回は、タカラトミーアーツの躍進を支えるマーケティング戦略に迫ります。
「面白い」を「売れる」に変換するためのロジックや、筐体(マシン)そのものを自社で製造しているからこそできる強み。そして、ライバル他社へのリスペクトが生む「悔しさ」を糧にした市場調査の裏側まで。
「一瞬の視線」を勝ち取るために、企画担当者たちが仕掛けている緻密なシミュレーションと、何があっても揺るがない「モノづくりへの情熱」を詳しく伺いました。
\お話を伺った方/
田邊愛海さん:ガチャ・キャンディ事業部 ガチャ企画部企画1課 主任
中村佑子さん:BP事業部 事業企画部広報宣伝課 課長
西北洋子さん:BP事業部 事業企画部広報宣伝課 上級主任
目次
人気の商品にある売れるポイント
ーー田邊さんご自身、入社当初と現在では企画する上での考え方に違いはありますか?
入社したての頃は、タカラトミーアーツの「パンダの穴」というユニークなブランドの影響も強く受けており、”変わったもの”や”突飛なもの”を出して驚かせたいという気持ちが大きかったです。
しかし、実際はそういったユニークさだけを考えるとインパクトだけが先行してしまい、「欲しい」と思わせるところまで到達できないことがわかりました。
ユニークで人気の商品には、一見突飛なものに見えても、実はただ破天荒なだけでなく売れるポイントがあることが次第にわかっていきました。
そこから、自分が面白いと思うことをそのまま出すだけでなく、商品として、世に出すものとしてどうしたら売れるのかを考えて作れるようになりました。

大量のガチャの中で目立たせる工夫
ーー最近はガチャの専門店が増えていますが、それによって企画の方向性などに変化はありましたか?
専門店が増えたこともありますが、カプセルトイの流行もあり、企画量も増えています。また、専門店の中で自分の商品を目立たせるために、台紙デザインも工夫するようになりました。
例えば、ファンシー系のキャラクターなら、他社も似たような商品を出しているので、あえて黒背景にして渋く作る工夫をして、大量に置いてある場所でどう目立たせるかを考えたり、タイトルと写真どちらを優先して目立たせるかなどを商品の特性に合わせて考えたりするようになりました。
当社のガチャマシンは、台紙部分が湾曲しており上半分が目立つので、なるべく上の部分に重要な情報をいれるなど、お客様目線に立ったシミュレーションをして対応しています。
自分の「やりたい」を大切に
ーー「かわいい」を企画する際、自分が思う「かわいい」が世間に受け入れられないこともあると思いますが、どう考えていますか?
もちろん自分が「かわいい」と思っても、世間的に受け入れられないこともあります。ですが、広くは売れなくても、「これしか集めない!」というような強いファンがつくことがあります。
ガチャは商品が多いので、大衆に広く売れるものもあれば、特定のファンに売れるものもあり、その凹凸があるのもガチャの特徴だと思います。
「これって本当にかわいいかな?」と考えることもありますが、自分が一番かわいいと思ったものを突き詰めれば、自信をもって営業をすることができたり、一貫した強いコンセプトの商品に仕上がったりと、良い商品になると私は思います。
忖度しすぎて普通なものになるよりは、信じて突き抜けた方が良いと私は考えています。
実際、何度も落とされても「これは絶対売れる」と言い続けて実現し、実際に発売した際に話題になった商品もあります。
自分がやりたい、売れると思って進んだものがインパクトを残すと思います。

タカラトミーアーツにしかない強み
ーーガチャ市場が拡大する中で、他社との差別化につながる核となる強みは何ですか?
タカラトミーアーツの大きな強みは、自社でガチャマシン(筐体)を製造していることです。現在、このマシンを自社で製造しているのはタカラトミーアーツとバンダイさんの2社だけです。
中村:ガチャマシンというのは一見似たように見えるのですが、内部構造のいたるところに特許が絡んでいて新しいマシンを作るというのが非常に難しいです。実際、現在市場にあるガチャマシンのほとんどは、この2社のどちらかのタイプです。
そのため、自然と当社のロゴを見る機会も多くなっているかと思います。さらに、グループ会社であるタカラトミーのコンテンツを活かせる点も大きな強みです。
「リカちゃん」や「トミカ」など、世代を超えて愛されている自社キャラクターとのコラボ商品を企画できるのは、タカラトミーアーツならではの特徴です。

競合他社との差別化ポイント
ーーガチャマシンの製造やタカラトミーのコンテンツ活用以外に、競合他社との差別化ポイントはありますか?
中村:当社のガチャ商品はアイデアに「ひとひねり」を加えることに強みがあります。例えば、キャラクターのフィギュアを作るときも、ただ原作のポーズをそのまま再現するだけでなく、違うポーズを入れるなど、一工夫することへのこだわりがあります。
田邊:また、タカラトミーアーツにはフォーマット化されていない自由な商品づくりの文化があります。
例えば、他のメンバーが企画した「サメジャー」のように、文具や雑貨のジャンルに近いような商品も「ガチャ」の範囲内で挑戦できる環境があります。そうした柔軟でチャレンジングな姿勢が、タカラトミーアーツならではの魅力に繋がってくると思います。
ーー企画を考える上で、どのようにインプットやアイデアを得ていますか?
アイデアの出し方は人それぞれです。突然のひらめきで生みだす人もいれば、じっくり考える人もいます。私はスケッチしながら考えることが多いですね。
発想の源は、ガチャやおもちゃの枠にとらわれず、ファッション・食べ物・レジャー、メディアなど、他業界のトレンドを見ることです。「これをフィギュア化したらどう編集できるだろう?」といった視点から着想を得ています。
また、「この要素に動物を組み合わせてかわいい仕草をさせたら、部屋に置いてもらえるのでは?」といったように、異なる要素を掛け合わせる発想も常に考えています。
タカラトミーアーツのマーケティング戦略
ーーPOP(ガチャ筐体の前面に入っている台紙や、商品の宣伝画像)のデザインについてはどのように考えていますか?
POPのデザインはかなり気を使っています。背景を単色にして商品を大きく見せた方が目立つこともありますが、それだけでは魅力が伝わらない場合は少し文字を入れてることもあります。タイトルの配置一つでも印象が変わるので、細部までこだわって作っています。
お客さんは商品を一瞬しか見てくれません。だからこそ、パッと見てかわいいと思えるデザインを作らないといけません。「なんだかたくさん並んでるな」と通り過ぎられてしまうのはもったいないので、一瞬で目を引くPOP作りを常に意識しています。
他社製品に対する学びと悔しさ
ーー市場調査はどのように行っていますか?
カプセルトイ商品に関しては、SNS上でメーカーやユーザーが紹介している商品で知ることが多いです。
その後、実際に店頭に並び始めたら自分でも売り場を見て回り、「お客さんがどれくらいガチャを回しているか」「どの場所に商品が置かれているか」などを観察しています。
また、お店の方の商品に対する評価も参考にしています。

ーーご自身ではよくガチャを回されますか?
自社商品の内容は把握しているので、主に他社のガチャを店頭でチェックしています。
「この発想いいな」「これは私が思いつきたかった!」と思うことも多く、ちょっぴり複雑というか悔しいなと思いつつ買うこともあります。(笑)
でも、同業者としてリスペクトの気持ちを込めてコインを入れて回しています!
他社製品に対するライバイ意識と敬意
他のカプセルトイ会社に対してのライバル意識はもちろんあります。カプセルトイ業界では毎月約400種類以上の新商品が登場するため、アイディアもやはり似てくることがあります。
他社製品に対して「この手があったか」と思ったり、話題のコンテンツやキャラクターに関する商品をいち早く出した企業に対して「さすがだな」「すごく早いな」と思うことがあります。
また、メーカーによって得意な仕様やジャンルがあって、アニメ系が強い会社もあれば、車などのメカ系が得意な会社もあります。「この仕様はこのメーカーにしかできないな」と思うことも多く、悔しく思う反面、非常に勉強になります。

ーー売り場チェックはよく行かれますか?
中村:定期的に行きます。ガチャの商品は入れ替わりが非常に早いので、チェックを怠るとすぐに新しい商品を見逃してしまうんです。
「ガチャステ」や「ガチャガチャの森」のような大型の集積売り場があると、パトロールのようにサッと通って確認しています。
先日、神奈川県にある、カプセルマシンの設置数が「3333面」でギネス世界記録に認定された売り場に行きましたが、あまりの量に圧倒され、まるで迷路のようでした。
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