#5夢や目標、やりたいことがない就活生へ。「人生の目的」が見つからない時の対処法

【進藤弘騎さん】

高校生の頃から国際協力に関して大規模に関わりたいと考え、大阪大学卒業後に外務省に入省。スペインでの研修を経て、主に中南米や紛争地帯での業務に従事。

退省後は国連職員として、ヨルダンで難民支援活動にも従事した。

人生に目標は必要か?

ーー日本の大学生へ向けて、人生もしくはキャリアのアドバイスをお願いします。

MIT(マサチューセッツ工科大学)の卒業式スピーチで、Dropboxを開発したドリュー・ヒューストンは、卒業生に3つのキーワードを伝えました。

テニスボール、5人のサークル、3万日。

1つ目はテニスボール。テニスボールを追っかける犬と同じように、熱狂、熱意を持って頑張れることを探す

その上で自分を決めるのは、あなたの周りの5人。あなたの周り5人の平均があなた

そして、寿命を82歳で計算したとき、あなたの人生は3万日ぐらいしかない。人生100年時代だったら3万6500日。皆さん20歳そこそこであれば、大体8000日ぐらいの人生が既に終わっています。

DropBox創業者がアメリカのMITの卒業スピーチで語った「人生の3つのコツ」

今すぐに行動を起こさないと、残された2~3万日なんてあっという間になくなります。計画を練ってるうちに過ぎてしまいます。

だから、「自分の熱意を見つけてすぐに動き出せ」というメッセージだったんです。

テニスボールを見つけられない人生

大切なのは、熱意を持って頑張れることを見つけ、考える暇もないくらいやる。自分にとってのテニスボールを見つけることです。

テニスボールを見つけることのできた代表例が、ジョブズやドリュー・ヒューストンです。

でも、8~9割の人はこのテニスボールを見つけられないで人生が終わると思うんです。

そうすると、熱意もなく2万何千日も暇つぶししないといけない。となると「辛くないですか。人生長すぎません?」となるのを私は危惧しています。

もちろん熱意を見つけられた、ヒューストンやジョブズが言っている王道を進めばいいと思います。

でも、王道を歩めない人の方が多い中で、どう生きていくかを考えていく。こっちの方が大事なんじゃないかと思います。

人生の目標がないなら社会貢献という選択

SDGsの講義をやる中で、SDGsとかの社会貢献って、とてもいい最後の逃げ道だと思っていて。

人生の時間を消費するためだけに、楽しくもないゲームをやるんだったら、どうせなら人のために、社会貢献をすれば後悔しないと思っているんです。

80歳になった時に「ゲームばかりやって良い人生だった」と思えたらいいけど、もしかしたら後悔するかもしれない。

けれど、社会貢献をして、人々に感謝される人生を送ってたら、自分から進んで始めたわけじゃないとしても「まぁ良い人生だったな」と思える気がします。

本当にやることがないのであれば、受け身だとしても、社会貢献をしてみたらどうか。という、提案です。

意識が自分ではなく社会に向いている時代

Z世代の子たちは、社会貢献や社会課題解決に関心が高いって聞いています。関心があるならば、こういう道があるって、積極的に発信するといいなと思ってます。

意識が自分じゃなくて外に向いてるってのは、時代なのかなと思っています。

これは、とてもいい流れですよね。

モヤモヤを言葉にする方法

ーー話題は変わりますが、大学生へオススメの1冊はありますか?

最近映画が話題になりましたが、「君たちはどう生きるか」の吉野源三郎の原作小説はすごくいいですね。

若い人だからこそ、考えられることがたくさんありそうな作品。ただ単に「君たちはどう生きるか」っていう問いにプラスして、貧困とか社会課題を考える上で、いい小説だと思います。

異文化への違和感、トゲを言葉にするには

ーー海外経験をしても、日本との違いをうまく言葉にできていません。どうすれば上手に言語化できますか?

話すことじゃないですかね。海外、現地の友人に相談するのがいいと思います。

養老孟司先生がかつて、生きてる上で「よくわからないままの状態」を「トゲが刺さった状態」と表現していました。

異文化を体験すると、そういうトゲをたくさん感じるんだと思います。

▶️仕事がつらく心にトゲが刺さっていませんか? そのトゲに抜き方を養老先生がお話します。(4:00頃~)

何でこれが気になったんだろう?

何でこれが痛かったんだろう?

何でこれがむかついたんだろう?

そういう風に考えながら、現地の人に「どう思う?」って聞くことで、違いや自分の思ってることがわかってくる

自分でも言語化するのが難しいことはたくさんあります。

異文化を体験したときに、何とも言えない「何だこれ」っていう感覚だけが残って、いまいち説明できないことは多いです。

価値ある情報の取り方

ーー情報や知見などを集める際は、どのような媒体を使うことが多いですか?

とある超有名なインフルエンサーが、動画で難民についてコメントを出してたんですけど、その全てが間違ってたんですね。

それを見て、インターネット、SNS、YouTubeなどの情報の危うさに驚いてしまって。

時代や年齢的な事もあるのかもしれないけど、自分はSNSよりもテレビや新聞を信用しています。

テレビにはスクリーニング機能があるし、間違いがあっても次の週には謝罪して訂正する。そのプレッシャーのもとでやっているという前提があるから、まだ信用できるなと。

多角的視点で物事を見る

加えて、多角化は必ずするようにしていて、特にトライアングル。三角形で物事を見る。

例えば、「今週はすごく暑かったな。」そう思ったときに、「これって日本だけなのかな?」など考えてみて、BBCやCNNなどの海外主要メディアを見る

  • 「テキサスで、56度を観測しました」
  • 「スペインでもラス・パルマスで山火事が多発しています」
  • 「ギリシャとイタリアでも、この数年でこれほど暑いのは初めてです」

このように、幅広く情報を取ることで、現在の気候変動の状況が、多角的に見えてくることがあるわけです。

探究ゼミの価値

自分は外交官をやっていたので、インテリジェンスと呼ばれる質の高い情報を取れるように心がけています。その上で大切なのは一次情報だと思います。

例えば、強盗事件のニュースを調べるとき、事件の被害者、目撃者とか、近隣住民に会いに行って話を聞く。

日々の情報収集活動では、リソースも時間も限られていますが、今後もし、インテリジェンスが必要な職種になるなら、やはり一次情報を取りに行く姿勢が非常に大事になります。

一次情報が大事

ーー探究ゼミの活動は、ある種一次情報を得ているので、価値がある活動と呼べそうですか?

探究ゼミの活動は、ある種一次情報を得ているので価値ある情報ですし、すごく意味のある活動だと思います!今後もぜひ続けてください。

特に今は、一部のインフルエンサーのような、自分のイメージだけで発信する人が大勢います。

例えば、

「難民キャンプにいる難民は働けばいいのに、支援漬けになって働かない」

と発言している人がいましたが、ヨルダンの例だと事実と異なっていて、85%以上の難民は、働かなくても食べていける難民キャンプには自発的に入らず、都市部で暮らしています

働く意欲は高いものの、なかなか就業許可を得られません。なんとか許されても季節労働。

ヨルダンでオリーブの実がたくさん収穫できる年に2か月くらいだけ、どうにか雇ってもらえる。あるいは、危険な建設の作業場での日雇い。

生きるだけなら難民キャンプにいればいいのに、「それでもいい、働けるんだったらやりたい」と仕事に殺到する。

そんな状況を見てきて、一次情報を持っている自分にとって、一部のインフルエンサーの発言は、衝撃的なレベルで間違っているなと感じています。

一次情報を取得することが、何よりも大切なんです。

編集後記:大学生が思うこと

今回、外務省官僚から国連職員として、ご活躍の進藤さんのお話をお伺いしました。

大学生である私たちにとって、イメージの湧きにくい外交官・国連職員の仕事の内容を詳しく聞けることは、とても貴重な機会でした。

進藤さんの、仕事への情熱や考え方がとても学びになりました。また、「情報の取り方」についても、多角的に見るということ、「一次情報をみる」ということの大切さを知りました。

これから、どんな仕事をするべきなのかを、探していく私たちですが、進藤さんのお話を伺うことで、インプット・アウトプットをもっともっとしていこうと、意欲が湧いてきました。

貴重なお話を伺うことができました。ありがとうございました。

[ 文:はる / 編集:吉中智哉]

[撮影:梨本和成 / デザイン:舩越英資 ]

次回:外務官僚進藤さんのキャリア論まとめ(作成中)

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探究ゼミ編集部
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