【第3回】ソフトバンク社外取締役・坂本真樹教授が語る、AI時代に「自分で問いを立てる力」と折れない心の作り方

坂本真樹
1969年生まれ。東京大学大学院にて博士号を取得。2000年より電気通信大学に着任し、現在は同大学副学長・大学院情報理工学研究科教授を務める。
言語学・認知科学・情報科学を横断し、オノマトペをはじめとする人間の感性をAIで扱う研究を行っている。
活動は学術分野にとどまらず、メディア出演や著書の執筆、研究成果を社会実装するため感性AI株式会社を創業し取締役COOを務めるほか、ソフトバンク株式会社の社外取締役として経営にも携わっている。
目次
大学教員からソフトバンク社外取締役へ
ーーソフトバンク社の社外取締役になった経緯を教えてください。
実は数年前まで、電気通信大学の教員は社外取締役に就任できませんでした。
ただ、4年ほど前から会社を創業したり、外部での活動が増えたりしたことで、いくつかの企業から「社外取締役をお願いしたい」というオファーをいただくようになりました。
それでも、大学教員が外部企業の経営に関わることへの規定が整っておらず、就任まで至りませんでした。
4度目の正直で実現した社外取締役
その後、大学でも外部の企業人材を招く動きが進み、教員が社外取締役を務めることへの理解が徐々に整ってきました。
大学教員は独立性が高く、利益相反のリスクが低いため、独立社外取締役としてのニーズが高かった背景もあります。
また、上場企業で女性の社外取締役を増やす流れが強まっていた時期でもあり、「AIに詳しい女性研究者」という点も評価されたのだと思います。
ソフトバンクは、いわば“4度目の正直”で実現した形です。
きっかけになったのは、ソフトバンクで行った社員向け講演です。エンジニアの方々に向けた講演内容を評価していただき、そこから就任につながりました。

社外取締役の仕事と役割
ーー具体的にどういう視点で経営に関わられていますか?
私は独立社外取締役なので、ガバナンス(企業統治、経営の監視体制)の観点から経営に関わっています。
ソフトバンクが儲かるようにアドバイスするというより、経営が適切に行われているかをチェックする役割です。
例えば、「AIに投資する」ということに対して、その投資はどのように回収するのか、きちんと計画が立てられた上で行っているのかといった点を確認します。
月1〜2回の会議に参加する範囲ではありますが、執行側の動きが適正に進んでいるかを客観的に見ています。
普通を目指さなくていい。個性がぶつかり合う経営の現場
ーー経営に関わる中で興味深かった出来事を教えて下さい。
物事を色々な角度から、それぞれの面白い発想をされる方達とご一緒させて頂く機会が増えたことです。
最近では、例えば元大津市長の越直美さんです。女性最年少市長を務めた方で、今はテレビのコメンテーターもされていますが、社外取締役でありながら基本は弁護士として、とても専門的な観点で論理的に話される方です。
孫正義氏や柳井正氏に見る研究者と経営者の共通点
また、創業経験のある方も多く、ソフトバンクの孫正義さんやファーストリテイリングの柳井正さんのように、一代で会社を大きくした方々は、一般の大企業のサラリーマン社長とは明らかに違う発想を持っていて、ある意味で“普通ではない”個性を持っています。
その点は研究者も似ていて、常に新しいこと・最先端のことを追わなければいけないので、電通大の先生方も皆どこか個性的です。
とはいえ、「普通の幸せ」は大事なんです。普通であること自体は悪いわけではなく、ただ“普通を目指さないといけないわけではない”と思っています。

AIを便利な道具で終わらせない、問いを立てる感性
ーー生成AIを武器にするには、どのような使い方が必要ですか?
最近とても強く感じるのは、AIをどう使いこなすか以上に、「自分で課題を見つける力」が重要になっているということです。
AIは基本的に質問に答える存在です。どんな課題を設定して、どんな質問を投げるかによって結果の質が大きく変わります。
そして課題を見つけるには、日常を当たり前として受け入れ過ぎないことが大事です。全ての物事に対して「なぜこれは必要なんだろう?」と疑問に思える感性が大切です。
自分で課題を見つけ、分析する
また、AIで大量に生成された情報を自分で分析・選択する力も必要です。
例えば、広告コピーをChatGPTに作らせると、10個ほどすぐに出てきます。しかし企業でその中から選ぶ場合、最終的に社長の感性で選ばれてしまうことも多く、それでは主観的な要素が強くなってしまいます。
私が2018年に創業した感性AI株式会社で開発した「感性AIアナリティクス」は、コピーを数値化し、尺度で比較し、人がどんな連想をするかまで分析できるようにすることで、客観的な判断を可能にしました。
つまり今後は、AIを便利なツールとして“ただ使う”だけではなく、日々の中で課題を発見してAIに質問を投げかけ、それを自分で分析して発見する力が大事なのだと思います。

人であることを最大限に楽しむ
ーー若い研究者・学生に伝えたいことを教えてください。
”人であること”を最大限楽しむことが一番大事だと思っています。私たちは人間なので、AIになろうとするとAIに負けてしまいます。
美味しいものを食べる、寝る、喜怒哀楽を味わう。そんな人間らしい感情をまるごと楽しんでほしいのです。

自分がやりたいことをやろう!
「人に言われたからやる」状態だと、メンタルが疲弊してしまいます。
私がどれだけ忙しくても元気でいられるのは、「自分がやりたい・楽しい」と思うことを選んでいるからです。
もちろん、自分だけが楽しければいいわけではありません。
自分の楽しさが誰かの役に立ち、喜んでもらい、、そこに価値が生まれる。だからこそ、虚しくならないのだと思います。
人間らしさというのは、喜びや悲しみ、嫌だと思う感情も含めて全部大切です。ネガティブな感情も否定せず、そのまま味わっていいのです。
感情で人と対話することも、喜怒哀楽をまるごと楽しむことも大事です。人間らしいところ全てを楽しんで欲しいと思っています。
プライベートの「好き」も、未来への投資になる
ーー仕事やプライベートで坂本先生自身が今一番楽しんでいらっしゃることは何ですか?
インスタグラムにも書いていますが、私は「車・おしゃれ・わんちゃん」の3つが大好きです。
>>>坂本教授インスタグラム
自分が気持ちよく生きることが大事だと感じます。ワンちゃんが好きなら思いきり可愛がればいいし、車が好きなら乗りたい車に乗ればいいと思っています。
これを「浪費だ」と批判する人もいるかもしれません。しかし、ビジネスの世界で出資が大きな成長を生むように、自分の感性を満たすための「投資」は、人生を豊かにし、仕事へのエネルギーとして還元されます。
学生たちも、自分の「好き」を肯定し、ビジネス的な発想を持って人生を設計してみてください。そうすれば、人生がもっと自由で楽しくなると感じています!
[ 取材:相木大空 / 編集:安村綾夏]
投稿者プロフィール


