#3 「社会貢献でメシを食う!」数値化とビジネス思考で世界を変えるNPO HEROの挑戦
「何か社会の役に立ちたいけど、一体何から始めたらいいんだろう?」
大学生の皆さんの中には、そう考えている人もいるかもしれません。NPO法人HEROは、「社会貢献でメシを食う」をスローガンに、途上国支援の分野で新しい道を切り拓いています。活動の効果を数値化し、ビジネスの視点を取り入れることで、より持続可能で効果的な支援を実現しようとしています。
第3回では、HEROの代表である橋本氏のインタビューを通して、活動内容や大学生へのアドバイスを紹介します。将来、社会貢献に関わりたいと考えているあなたにとって、具体的な一歩を踏み出すきっかけとなるかもしれません。
【橋本博司さん】
1978年生まれ。法政大学経済学部卒業。
大学卒業後、飲食店経営、世界一周旅行、大手企業での新卒採用責任者を経て、2011年にNPO法人HEROを設立。PO法人HERO代表。株式会社ペイフォワード代表。
「旅するように働く」を人生のテーマにカンボジアの教育問題に取り組む。大学生向けにカンボジアでインターンシップを開催。
活動や寄付金の効果を数値化
ーーNPO法人HEROの今後の展望を教えてください。
今、目指してるのは、HEROの活動の効果を数値化することです。具体的には、寄付の費用対効果を出せるようにしたいと考えています。
今までの活動は、「学校を作って、子供たちが笑顔になりました」ということを報告して終わりでした。
でもそれが本当はどこまで効果があったのか、どういうインパクトがあったのかを数値化できていない、という点が私たちの課題だと感じていました。
そのため、現在は大学院に通い、子供たちの学力の分析をしています。
仮に1万円をHEROに寄付したとして、その1万円でどれくらい子供たちの学力や生涯賃金が上がるのかを数値化していきたいです。
投資効果が数値として十分に高いと言える水準まで、寄付金を出せるようにしていきたいと思っています。
数値化で世界的に支援効率が上がる
NPOに対する批判で、「何にお金が使われているのか分からない」というのをよく耳にします。でも、実際には「自分のお金が有効に使われたか分からない」のではないでしょうか。
効果のない活動を続けるのは全くの無意味なので、NPO法人HEROとして数値化できるものは全て数値化していくつもりです。
学術的に研究をして、エビデンスを出し、NPOの実務にフィードバックして、活動内容をさらに研究するというループを作りたいと考えています。
活動の効果を数値化する団体が増えてくると、加速度的に有効性の高い活動を世界に広めることができます。
例えば、カンボジアで有効だった活動をインドやアフリカでやってみるという流れです。逆もしかりで、効果の無い活動は世界的にやらないという選択ができる。
したがって、効果を数値化することで世界はより良くなると考えています。今後は研究とリンクさせた活動に力を注いでいきたいです。
「社会貢献でメシを食う」の真意
ーー「社会貢献でメシを食う」というスローガンを(HERO schoolで)掲げていらっしゃいますが、ご自身で何か意識していることはありますか。
どんな収益モデルを組めるかということは、常に意識しています。自分自身、飲食店経営の経験もあるので、ビジネス的な思考に寄りがちな面はあります。
「楽しそう」などと直観的に始めた事に対しても、どんなマネタイズが出来るかは必ず考えています。
一方で、営業の意識としては、新規顧客をガンガン獲得していこうとはしていません。1人ひとりのお客様に対して深くお付き合いしていくスタイルです。お客様に対しては時間や労力を惜しまずに関係を築いています。
大学生へアドバイス
ーー 大学生に伝えたいことはありますか?
失敗を恐れず多くの事にチャレンジしてほしいです。
社会人になると怒られるだけで済まなくなることもあります。だから、大学生のうちにやり散らかした方がいいんです(笑)
何でもいいから興味があるものをとりあえずやってみて、つまらなければ止めればいいです。何か一つ成功させるのではなく、失敗してもやり続けることです。
多くのことを経験した振れ幅は将来に活きますし、多ジャンルを経験すると、会う人が異なるので人脈も広がります。
突き進む1つの軸を持ちながら、同時に5~10個の別プロジェクトも走らせるのがオススメです。
途上国支援をしたい人へ
ーー最後に、橋本さんのように途上国の社会支援を目指す方に対するアドバイスがあればお願いいたします。
今できることをやってください。
例えば、大学生で学校を作りたいと思っても、すぐには学校はできません。
そこで私の場合は、NPOを調べました。カンボジアに学校を作っている、JHP・学校をつくる会という団体を見つけ、話を聞きに行って、とりあえず月額会員として寄付をすることから始めました。
やりたいことへのレールを持つ
自分の力で何かをしているという訳ではないけれど、毎月お金が引き落とされるのでカンボジアのことを忘れないし、自分のモチベーションを保つことができます。
定期的にイベントに参加するでもいいし、それこそ寄付するでもいいし、お金を貯めて年1回支援したい途上国に行くでもいいし、何かしらモチベーションを高め続ける。
日常に流されてしまわないよう、少しでも行動を取り続けることがポイントです。それがいつか、自分で途上国支援の準備ができたときに、行動に移すことができる方法だと思います。
[ 文:若林千紘 / 編集:吉中智哉]
[デザイン:石橋天知]