芥川賞・直木賞の中でも特に読みやすいオススメ作品 3選!!
芥川賞・直木賞は、日本文学界で高い評価を受ける権威ある賞ですが、その中には幅広い読者に愛される読みやすい作品もたくさん存在します。
今回の記事では、私自身が実際に手に取り感動した、初心者でも楽しめるおすすめ作品3選をご紹介します。各作品の魅力や独自の世界観を紐解きながら、文学の楽しさに触れてみませんか?

目次
芥川賞・直木賞って何?
芥川賞・直木賞とは、雑誌に掲載されたもの、または出版された書籍の中から最も優秀な作品に贈られる文学賞のことです。 選考は1年に2回(上半期は7月、下半期は翌1月)行われます。
芥川賞の選考対象は、新人作家による短編~中編の純文学です。純文学とは、文章の「芸術性」を重視した作品のことです。美しい描写や文体、言葉選びなど、作家の個性がより強く表された作品が選ばれます。
直木賞の選考対象は、中堅作家による長編の大衆小説です。大衆小説とは、芸術性よりもエンターテイメント性(読者がどれほど楽しめるか)を重視した作品のことです。SFやファンタジー、推理小説など幅広いジャンルが含まれます。
詳細な情報は日本文学振興会公式サイトをご覧ください!
私が実際に読んだ、読みやすい芥川賞・直木賞3選
純文学や大衆小説、文学賞と聞くと、「難しそう」「堅い文章なのかな…」とイメージする方もいるのではないでしょうか。
今回は、小説好きの私が実際に読んだ、読書初心者でも読みやすい芥川賞・直木賞作品のおすすめ3選を紹介します!
タイトル | 著者 | 受賞情報 | あらすじ・テーマ | おすすめポイント |
---|---|---|---|---|
『推し、燃ゆ』 | 宇佐美りん | 2020年 第164回 芥川賞受賞 | 女子高生あかりが推しに没頭し、自己肯定と社会の非難の間で揺れる心情を描く。 | 推し活している人、心の支えや熱中できるものを求める方に最適。 |
『コンビニ人間』 | 村田紗耶香 | 2016年 第155回 芥川賞受賞 | 18年間コンビニで働く36歳の古倉恵子が、社会の「普通」に疑問を抱きながら独自の生き方を貫く姿を描く。 | コンビニ勤務の経験者や、現代社会の価値観に疑問を感じる人におすすめ。 |
『風に舞いあがるビニールシート』 | 森絵都 | 2006年 第135回 直木賞受賞 | 短編集で、自己の信念と大切なものを守るための葛藤と決断を、多様な人物の視点から浮き彫りにする。 | 自分の大切なものを見つめ直したい人、前向きな生き方を探求する方にぴったり。 |
1.『推し、燃ゆ』/宇佐美りん
☆2020年 第164回 芥川賞受賞
宇佐美りんさんが、現役大学生21歳で受賞した作品です。ある女子高生が、「推し」の存在に生きがいを見出しつつも、他人に理解されない苦しみを抱える姿を描きます。
-内容紹介-
主人公の女子高生あかりは、学校、アルバイト、家庭、どこにいても上手くいかず、生きづらさを抱えながら毎日を過ごしています。
そんなあかりが、心の底から熱中できること。それは”推しを推すこと”です。
——逃避でも依存でもない、推しは私の背骨だ。——
——全身全霊で打ち込めることが、あたしにもあるという事実を推しが教えてくれた。——
(本文引用)
一人のアイドルを推すことにすべてを捧げるあかりは、どんなに苦しいことがあっても、その辛さと引き換えに、推しに安らぎを求めるのだといいます。
推しは、自分に生きる意味を与えてくれる唯一の存在なのです。
そんなある日、あかりはSNS上である信じがたい情報を目にします。
——推しが燃えた。ファンを殴ったらしい。——
自分を支える「背骨」のような存在の推しを信じる気持ちと、あるスキャンダルによって沸き起こる社会の非難。
この板挟みになったとき、彼女はどう行動するのでしょうか…?
「推し活」に潜む光と影
推し活の喜びとともに、そこに潜む危うさを考えさせられる作品です。
あかりは、日々生きづらさや孤独感を感じながらも、「推し」という存在に全幅の信頼を寄せることで、心の支えを見つけています。
しかし、SNS時代にある今、その支えが一瞬にして崩れ去ってしまう可能性も孕んでいるのです。
日々の生活の中で、嫌なことや辛いことがあっても、推しを見たり、曲を聴いたりすると、少し気持ちが和らぐことってありますよね。
しかし、何かのきっかけで、もしあなたの推しが世間の非難の的になったら——
あなたはそれでも推し続けますか?
こんな人におすすめ
・推し活をしている人
・生活の中に心の拠り所がある人
・熱中できるものがある人
2.『コンビニ人間』/村田紗耶香
☆2016年 第155回 芥川賞受賞
18年間コンビニアルバイトを続ける36歳の女性の生き様を通して、現代社会の「普通」とは何かを問いかけます。
一内容紹介一
主人公の36歳古倉恵子は、学生時代から18年間、同じコンビニでアルバイトを続けています。
——朝になれば、また私は店員になり、世界の歯車になる。そのことだけが、私を正常な人間にしているのだった。——
毎日コンビニ食を食べ、家にいる時も常にお店のことを考えるほど、彼女にとってコンビニは生活のすべてです。
ある日、婚活目的で働きにやってきた35歳の新人男性「白羽」と出会います。
白羽は古倉の生き方を真っ向から否定し、社会の価値観を押し付けてきます。
——この世界は異物を認めない。僕はずっとそれに苦しんできたんだ——
——今のあんたは意味不明ですよ。結婚も就職もしていないなんて、社会にとって何の価値もない。——
就職先はなく、結婚もせず、恋人もいない。そんな彼女の生き方は周囲に理解されず、時に軽蔑のまなざしを向けられてしまいます。
——お願いだから、普通になって。——
結婚して子どもを産み、会社で働く。それが、社会が定めた「幸せ」の形だと彼らは信じているのです。
しかし、恵子にとってそんな生き方はどこか遠い世界のことのように感じられます。
「こうあるべき」という周囲の圧力が、彼女の生活を狂わせてしまうのです…。
「普通」とは何か?
実際にコンビニ店員として働いていた村田沙耶香さんが、自身の経験をもとにしたリアルな描写と、シンプルで読みやすい文体がポイントです。
人それぞれの生き方があって良いはずなのに、世間の”当たり前”が、ある人の意思のない人生を作りあげてしまう。
どんな生き方が「普通」で、なぜ周りと同じでなければいけないのか?
社会が定めたレールの上を歩む人生は、本当に自分にとって幸せなのか?
社会に根付いている「普通」という価値観の意味を問いかける一冊です。
こんな人におすすめ
・コンビニで働いた経験がある人
・現代社会の価値観に疑問を抱いている人
3.『風に舞いあがるビニールシート』/森絵都
☆2006年 第135回 直木賞受賞
“自らの信念や価値観を守って黙々と生きる”
自分だけの「大切にしているもの」を内に秘めながら生きる人々を描く、6つの短編集です。
今回は、私のおすすめ2編を紹介します!
<第3編 守護神>
主人公の30歳山代裕介は、昼間はホテルでアルバイトをし、夜間大学に通うフリーター。
ある日、大学に「ニシナミユキ」という、社会人学生の間では有名で、優秀な存在がいるという噂を聞きます。
彼女は"代筆の達人"と呼ばれるほど、どんな依頼でもその人に合った文体で文章を書き上げるのだそう。
時間の余裕が無い中で肉体的にも精神的にも追い詰められた裕介は、古典のレポート課題の代筆を彼女に依頼します。
しかし、彼女が代筆を引き受ける人の条件は「会社という組織に縛られている社会人学生」。フリーターである祐介の依頼をなかなか受け入れてくれません。
ところが、課題の説明をしていく内に、裕介は豊富な古典の知識と、それに対する考察を彼女の前で熱弁するのです。
ニシナミユキは、レポートを書くのに十分な自論を持っていながら、他人を頼ろうとする彼の姿に呆然としつつも、ひとつの結論に辿り着きます。
——あなたが私に何を求めていたのか、やっとわかった。きっかけはレポートの代筆依頼だったかもしれない。でも、あなたが真のところでもとめているのは、そんなことじゃない——
裕介がニシナミユキに対して求めているもの、そして、彼女が代筆依頼を引き受ける理由とは何なのでしょうか?
<第5編 ジェネレーションX>
主人公は、小さな出版社の編集部に勤める野田健一。
ある日、「通販雑誌の特集ページに誇大広告がある」とクレームが入り、ページ担当者の健一が、販売元である玩具会社の社員石津直己と共に直接謝罪に行くことになります。
2時間かけてお客さんの元へ行く車中、助手席に座る石津は、私用の電話を掛け続けます。
健一はその話を聞いているうちに、石津の高校時代のメンバーが、明日10年ぶりに集まって草野球をする約束をしていることを知ります。
——十年も経てば今よりも大事なもんが増えて、責任も、足かせも、いろんなもんが増えてるだろうけど、でも十年のうちでたった一日、みんなと草野球ができないような人生はごめんだよな、って。——
しかし、石津の機転のきいた対応で無事にクレーム対応を終えると、石津の携帯には「うちで扱う指人形にクレームがついたから、必ず明日までに対応に行け」という社長からのメールが入っていました。
——会社、辞めちゃおうかな————なんだかんだ言って僕は明日、木更津のお客さんちでぺこぺこ頭下げてるんだろうな。——
石津は仕事を取るか、十年前の仲間との約束を取るかの決断を迫られるのです…。
自分が「大切」にしたいもの
才能溢れる人気パティシエの味を広めること、殺処分される犬を一匹でも多く救うこと…
幸福を感じることは人それぞれですが、この作品の主人公たちは皆譲れない物があり、自分軸がぶれない人たちなのです。
周りからどう言われようと、「自分にとって大切なもの」を守って生きる姿が描かれます。
人には理解されなくても、自分が心から大切にしている物事を肯定してくれるような一冊です。
こんな人におすすめ
・自分だけの「大切なもの」がある人
・前を向けるような作品を読みたい人
芥川賞・直木賞の魅力とは?
芥川賞・直木賞は、日本文学界の権威として知られる一方で、初めて文学賞に触れる読者にも親しみやすい作品が多く存在します。これらの賞が持つ魅力は、読者の日常や心情に直接訴えかけるテーマ、多様な表現方法、そして現代社会への鋭い問いかけにあります。
読者の日常に共鳴する
まず、どの作品も「生きづらさ」や「自己肯定」といった普遍的なテーマに焦点を当てています。たとえば、『推し、燃ゆ』では、現代のSNS時代における「推し活」が、若い女子高生の心情や自己肯定感と社会の非難との葛藤を浮き彫りにします。
また、『コンビニ人間』は、18年間コンビニで働き続ける女性の生き様を通して、日常に潜む「普通」という価値観への疑問を問いかけ、読者が自らの生活と照らし合わせながら共感できる物語となっています。
多様なストーリーテリング
さらに、これらの作品は多角的な表現と独自のストーリーテリングで知られています。芥川賞は純文学的な側面を持ちつつ、直木賞はエンターテインメント性の高い作品が多いという点も魅力のひとつです。
たとえば、『風に舞いあがるビニールシート』は短編集形式を採用し、各短編ごとに異なる視点から登場人物の内面や葛藤を描き出しています。個性的なキャラクターたちが生み出すリアルな描写は、読者に深い共感と感動をもたらします。
現代社会への問いかけ
また、これらの作品は現代社会が抱える価値観や生き方についての問いかけを含んでいます。
『コンビニ人間』では、社会が押し付ける「普通」という価値観に対して疑問を投げかけ、読者自身に自分の生き方や価値観を再考させる機会を提供しています。
各作品は、単なる物語の枠を超え、現代の問題意識や個人の内面に深く根ざしたテーマを扱っているため、読者は物語を通して自分自身と向き合うことができます。
まとめ
今回紹介した3作品のように、アルバイトや推し活など、私たち若者の身近にある出来事をテーマに描かれた作品も多くあります。
読みやすさやエンタメ性がありつつ、現代の文化や社会の価値観について考えさせられる作品ばかりです。
読書は苦手…という方でも、自分が興味のあることについての話だと読める気がしませんか?
ぜひ今後の芥川賞・直木賞受賞作品にも目を向けて、お気に入りの小説を見つけてみてください!
[ 文:若林千紘 / 編集:吉中智哉]
[デザイン:舩越英資]
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