【第2回】日本のガチャガチャは世界でどう売れる?株式会社エールが語る海外展開20%を支える戦略と市場の違い
日本で生まれた「ガチャガチャ文化」は、いま世界へと広がっています。
その裏側では、国ごとの文化や決済事情、トレンドの違いと向き合いながら、試行錯誤を重ねる現場の姿がありました。
第2回では、株式会社エールの海外売上が全体の約20%にまで成長した背景や、各国で異なるガチャ事情、そして世界を相手にモノづくりをする面白さと難しさに迫ります。
\この記事でわかること/
- 日本のガチャガチャが海外に広がった背景と理由
- 国ごとに異なるガチャガチャのトレンド・人気ジャンル
- 海外展開における課題と、現場で求められる視点

\こんかいインタビューに応えていただいた方/
カプセルトイ事業部 部長
森國大輔(もりくに・だいすけ)さん
カプセルトイ事業部 係長
梁田ゆう梨(やなた・ゆうり)さん
目次
日本のガチャガチャを海外へ
ーー森國さんがガチャガチャを海外にも広めるようになったのは、いつごろからなんでしょう。
もう10年以上になります。カプセルトイ事業を始めた頃から、売れる商品を追い求めて海外に行くようになりました。
日本のガチャガチャブームがきっかけで、海外にもガチャガチャショップが増えている現状を見ると、手応えは強く感じます。
コロナ禍が後押しした、世界的ガチャブーム
ガチャガチャは対面販売ではないため、コロナ禍においても影響を受けにくい業態でした。日本ではここ5〜6年でブームが一気に加速しました。
コロナ禍でアパレル店舗がファッションモールから撤退する中、それまでスーパーの片隅に置かれていたガチャガチャが、空いたテナントに入りやすかったことも追い風になりました。
アミューズメント施設もほとんどが閉店せざるを得ない中で、ガチャガチャのブームが出来上がって、一気にショップが増え、そこから海外にも展開し始めました。

海外での人気が広まったワケ
ーー海外のガチャガチャ人気はどのように広まったのでしょうか?
台湾は日本と文化が似ていて、硬貨の価値もあるので、ガチャガチャはたくさんあります。
一方で、韓国や中国では、通貨事情がガチャガチャ普及の壁になっていました。硬貨の価値が違うのです。
韓国で最も価値の高い硬貨は500ウォン(約50円)です。500円の商品を販売するには10枚の硬貨が必要になります。また、韓国はカード社会で、そもそも現金を持ち歩かない人が多い。
中国も同様で、1元硬貨は約20円と価値が低く、ガチャガチャが成立しづらい環境でした。
「硬貨の壁」を超えた決済技術の進化
しかし近年、
- 中国:WeChatによるQRコード決済
- 韓国:クレジットカード決済
- 香港:交通系ICカード決済
といった形で、国ごとに決済方法が進化しました。
「日本のガチャ文化を取り入れたい」という動きの中で、私たちも機械開発などをサポートしながら、海外でガチャショップが増えていく様子を見ています。
その過程で、日本のカルチャーが持つ影響力の大きさを強く感じています。
WeChat:中国のテクノロジー大手テンセント社が開発・運営する世界最大級のマルチプラットフォームメッセージングアプリ。決済、ソーシャルメディア、ゲーム、ショッピングなど、多岐にわたる機能を統合している。
海外売上20%まで成長した理由
ーー海外の売り上げの割合はどのくらいですか?
4〜5年前まではほぼゼロだった海外売上が、現在では全体の約20%を占めています。
一方で日本国内は、新規参入メーカーが急増した影響もあり、売上はやや落ち着いています。私たちが事業を始めた当初は20数社だった競合が、現在では100社以上に増えました。
ただ、その分を海外展開が補っており、事業全体としては非常に良いバランスが取れていると感じています。
国ごとに異なる“検査基準”の壁
ーー海外展開していく上で課題はありますか?
最大の課題は、国ごとに異なる検査基準です。特にアメリカは基準が非常に厳しく、日本では問題なく流通できる商品でも、そのままでは販売できないケースがあります。
国ごとに求められる基準が違うため、日本の基準で作った商品でも受け入れられない地域がある、というのが現状です。ここが今もっとも大きな壁になっています。
一方、日本国内では商品開発や流通の仕組みがすでに確立されており、運営面で大きな課題はありません。
課題があるとすれば商品そのものの方向性。例えば「この仕様のほうがより喜ばれたのではないか」といった企画面での反省点です。流通や運営の仕組み自体はほぼ確立されています。

国によってまったく違う「売れるジャンル」
ーー日本と海外では、トレンドの違いはありますか。
日本と海外では、トレンドは大きく異なります。日本では売れにくい商品が、韓国では即完売することもあります。
国ごとの傾向としては、
- 韓国:ぬいぐるみ・布製アイテム、デザインフィギュア、ソフビ
- 台湾:ミニカー、輪ゴム銃、ヨーヨーなどの男児玩具
が特に強いです。
ソフビ:ソフトビニールの略。柔らかいプラスチック素材で作られた製品。
台湾では小学生だけでなく、おじいちゃん・おばあちゃんがガチャガチャを回す姿も珍しくありません。幅広い年齢層に親しまれている市場と言えます。
一方、日本ではガチャガチャのメインターゲットは20〜40代の大人層で、子ども向け市場は縮小しています。
その背景には、販売場所の偏りがあります。日本では市場規模の半分が「ガチャ専門店(ショップ)」で占められていて、これらの多くが都市部に集中しています。
小さい子どもが気軽に購入できる環境ではないため、子どもの購買が減り、大人中心の市場になっているのが現状です。

日本は大人中心、海外は年齢層が幅広い
ーー日本と海外で、ガチャガチャを回す年齢層にも違いがあるんですね。
海外では、20代〜50代は仕事で忙しく、ガチャガチャを回す人はそれほど多くありません。その一方で、10代や60代〜70代の層が非常にアクティブなのが特徴です。
例えば台湾では、小学生がお小遣いでガチャガチャを回すだけでなく、高齢者が輪ゴム銃のような玩具系ガチャを楽しむ光景も日常的に見られます。
こうした背景から、台湾では購入層が若年層と高齢層に二極化しており、玩具系の商品が根強い人気を持っています。
国ごとの文化や生活スタイルの違いによって、ガチャガチャの“届き方”は大きく変わるのです。
流行の移り変わりと、求められる“勘とセンス”
ーートレンドの切り替わりにはどのように対応していますか?
現在、海外で「かわいい」と評価されているデザインの多くは、もともと香港発のものです。香港はかつてイギリス領だった背景もあり、欧米文化の影響を受けながら独自のデザイン文化が発展してきました。
ただし、売れる商品の方向性はここ2〜3年で大きく変化しています。
5〜6年前までは、目が「ただの点」のようなシンプルなデザインが主流でしたが、現在は「ちいかわ」に代表されるように、目がうるっとした感情表現のあるデザインでなければ受け入れられにくい傾向があります。

国ごとに異なるヒットの形と、流行のスピード感
私自身、頻繁に海外を訪れていますが、「この国ではこれが強い」といった傾向は本当に国ごとに異なります。ただ、毎月各国に展開する商品自体は基本的に同じで、その中からどれがヒットするかは市場によって変わります。
目や表情といったデザインの流行は常に切り替わっていくため、正直なところ難しさもあります。
ラブブが流行して以降、海外ではソフビやスクイーズなども同じ系統のデザインが一気に広がりました。
流行には誰もが乗りますが、その切り替わりは非常に早い。勘とセンスが必要なので、その流行に付いていくのが結構難しいです。
ガチャガチャで届けたい「小さな幸せ」
ーーガチャガチャを通じて、ユーザーに届けたいことは何ですか。
森國 ちょっとした安らぎや喜び、思わずクスッと笑える体験を低価格で提供したいと考えています。特に地方ではおもちゃ屋さんが減っているため、スーパーで気軽にガチャガチャを回せる楽しみを、子どもたちに届けたいです。
梁田 楽しく商品作りをしているので、みんなが「かわいい」「楽しい」と感じて手に取ってくれる商品を作りたいです。女性として「かわいい」商品の研究を続け、より良い商品づくりを目指しています。

若者へのメッセ―ジ
ーーこれから社会に出る学生や若者に伝えたいメッセージをお伺いしたいです。
森國 この仕事は娯楽品を作る仕事なので、好きじゃないと続けるのが難しい部分があります。自分が生み出したものが世に出て、多くの人に喜んでもらえることが一番の楽しさです。
毎日同じことをするのではなく、常に新しいことを考える仕事なので、やりがいがあります。
梁田 やりたいことを諦めなくていいということを伝えたいです。私も最初はおもちゃ会社に入れませんでしたが、諦めずに挑戦し続け、3社目で入ることができました。やりたいことを簡単に捨てずに、チャンスを待つことが大切です。
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