【第1回】ガチャ®はどう作られる?タカラトミーアーツ企画担当者が明かすヒットの裏側と制作工程

日常のふとした瞬間に、ハンドルを回す。カプセルが「ゴロン」と落ちてくる、あの数秒間のワクワク感。今や日本のポップカルチャーとして世界を席巻するカプセルトイ(通称「ガチャ®」)は、私たちにとって最も身近なエンターテインメントの一つです。

しかし、わずか50mmのカプセルに詰め込まれたその「小さな世界」が、どのような工程を経て、どんな想いで作られているのかを知る人は多くありません。

今回は、数々のヒット作を世に送り出しているタカラトミーアーツさんを直撃。

企画担当の田邊さんをはじめとする現場の皆さんに、月400種類以上の新商品が入れ替わる激戦区での企画の裏側とクリエイターの矜持を詳しく伺いました!

\お話を伺った方/
田邊愛海さん:ガチャ・キャンディ事業部 ガチャ企画部企画1課 主任 
中村佑子さん:BP事業部 事業企画部広報宣伝課 課長
西北洋子さん:BP事業部 事業企画部広報宣伝課 上級主任

スマホ時代だからこそ響く、カプセルトイの“手触り”体験

ーーカプセルトイの魅力について教えてください。 ‎

私の中では最小単位のレジャーというか、手軽に味わえるイベントとして捉えています。

コロナ禍で遠くへの外出ができなくなった時に、近所のスーパーやショッピングセンターでガチャを回すのが楽しみだったという話を聞いたことがあります。お出かけや遊びの一環として、普通のお店とは違うワクワク感がある点が魅力だと思います。

加えて、実際にお店に行って探して、ハンドルを「ガチャ」っと回して「ゴロン」と出てくるような「リアル性」も魅力だと思っています。スマホやネットとは異なる、実際にマシンに触れて手に入れる「手触り」がカプセルトイの魅力なのかなと思います。

制約があるから面白い、手のひらサイズに込める工夫

ーーどのような思いでカプセルトイを制作されているのか教えてください。 ‎

カプセルトイは形状や大きさ、価格の面で制約があります。まず、カプセルは大きくても50ミリ〜60ミリなので、それに入らなければいけません。価格は300円から500円くらいが一般的です。

「手のひらサイズで安価なもの」という制約がある中で、いかにかわいい、おもしろいと思ってもらえるものを作るかというところがポイントです。このカプセルトイならではのルールの中で、何ができるかを考えるのが楽しいと思っています。

月400種類の新商品、スピード勝負のガチャ市場

また、カプセルトイは今いろいろな会社から発売されていて、月に約400種類以上の新商品が発売されています。1ヶ月程度で新しい商品と入れ替わり、発売したと思ったら次の瞬間になくなっているような、かなりサイクルの早い業界です。

入れ替わりが激しい中でいかにお客様の目に留めてもらえるか、かわいい・おもしろいと思ってもらえるかを考え、すぐに魅力が伝わるものを作れたらいいなと思いながら作っています。 ‎

カプセルトイはどう作られる?企画から発売までの流れ

ーー1つの商品を作るまでの過程を教えてください。 ‎

オリジナルの立体フィギュアを例に出すと、最初に、企画会議に提案をし、ほかの企画担当や上司に見てもらい、いろいろなアドバイスをもらいます。

企画会議でOKが出たら、工場でコストや設計方法を確認します。その後、外部の協力会社や職人の方に依頼し、粘土や3Dツールなどでフィギュアの元の形状となる原型を作成し調整をします。

形が決定したら、工場に原型を送って複製するための金型(たいやきを焼く金属のようなもの)を作ります。金型で大量生産できる体制を作り、実際のサンプルを作って調整していきます。

その後、カプセルに封入する説明書や、マシンに入れるPOP(台紙)のデザインをします。完成したものをチェックしてから世に出します。

開発期間はフィギュアで約8〜9ヶ月くらいかかります。企画を発案してから世に出るまでに1年弱の期間がかかるイメージです。 ‎

何人が関わる?商品化を支えるチーム体制

ーーその一連の流れの中で、どのくらいの従業員の方が携わっているのですか?

会社内では、企画担当以外にも安全性を見る品質管理や生産管理など幅広く商品に携わる方がいます。発売までを含めたら営業や広報の方も含まれます。

社外では、原型を作る制作会社の方や、デザイナーさん、工場の方を含めると膨大な人数になります。少しでも携わる人を数えたら何百、何千人規模になるのかなと思います。 ‎

会議で出す商品企画は、オリジナルのアイディア以外にも、他社の版権のキャラクターやアニメキャラクター、企業とのコラボ商品などなど、幅広いジャンルの商品があるため、一人当たり月に10から30企画くらいは提案しているのかなと思います。

通る企画と通らない企画の違い

ーー通る企画と通らない企画の割合はどのくらいですか? ‎

場合によります。企画が通るかどうかには、いろいろな理由があります。

例えば、需要の高いコンテンツはたくさん商品を出さないといけないので、商品化OKが出やすい傾向があります。一方、アイディアはよくても、コストや安全面、権利の関係で難しいといったケースもあります。

また、自分から新規のアニメやキャラクターの商品化を提案することもあります。それがOKが出ることもあれば、様々な理由で見送られることもあるので、一概に割合は言えませんが、半々くらいと言っておきましょうか。 ‎

入社したての頃は、まだガチャの世界もわかっていない上に、キャラクターについても理解が乏しいので、全く通らないということもよくありました。

ただ、1~2年やってコツをつかめてくると通りやすくなり、1回の企画会議で8~9割通るときもあります。 ‎

ロジカル企画 vs ビジュアル企画

ーー企画を出すには視覚的に訴える必要があると思いますが、絵が描けないとコンテンツ制作は難しいですか?

人によって提案スタイルが違います。

パッと見で伝わりやすい、ビジュアル的な資料で出す人もいれば、ロジカルに「今こういうのが流行っていて、こういう流れがあるから、これは売れる」と理詰めで出したり、外部のプロのデザイナーさんに依頼して完成度の高い企画書を持ってくる人もいます。

絵が得意だから有利というわけでもなく、いろんな提案の仕方があります。それによって得意なジャンルも違います。

ーーロジカルな企画とビジュアルな企画、売上の面で違いはありますか?

ジャンルが違うというか、どちらが売れるとも限らないです。どちらにもいい面がありますが、強いて言えばロジカルな企画の方が、商品を提案するときに営業トークがしやすいという面はあります。

ガチャは販売代理店さんに商品を提案して商品を仕入れていただくのですが、ロジカルな理由があれば、たとえキャラクターや流行を知らない方にもその商品の特徴が伝わりやすいからです。

でもビジュアルで勝負する企画は「なんだかわからないけどかわいい」という理由で、営業活動が盛り上がったり、実際店頭ですごく売れることもあるので、本当にどちらとも言えません。

企画はどうやって全国へ届けられるのか?

ーー販売代理店さんに商品を提案する際に、どのようなことをお願いしますか?

「こういう商品が出ます。こういうポイントがあって、こういうふうに売れるので買ってください」という商品特徴などがわかるカタログを企画担当が作って、それを営業に持っていってもらい、各地の販売代理店さんに見せてもらうようにしています。

私たち企画は直接営業しに行けないので、その紙面に思いを託して全国を回ってもらうという感じです。 ‎

今はリモート商談もあるので、昔のように全国津々浦々足で回ることは減っていると思いますが、それでも北から南まで全国の販売代理店の方に提案をしております。

月1回の真剣勝負、個性あふれる企画会議

ー企画会議には何名の社員さんが参加しますか? ‎

現在企画部には20〜30人くらいいて、その全員が参加します。加えて企画を判断する企画課長や部長がいて、そこで1人ずつ発表して、その場で意見を言い合います。

「これかわいい」とか「これ最近流行ってますね」とか、逆に「これ本当に流行ってるの?」みたいな話をしながら、後日企画部長たちが検討し可否を発表するという感じです。 ‎

企画会議は月に一度、大体月末に行われています。

みんな一気に企画を持ち寄り、会議室でプロジェクターを映しながら自分のスタイルでプレゼンしています。  

ーー田邊さんご自身はどちらのタイプですか? ‎

私は絵を描くことが好きなのでビジュアルは詰めていくのですが、一発芸スタイルだと不安になってしまうので、できる限り情報を集めるようにしています。   

例えば「韓国を中心に白い犬が流行っているから、20代の女性に向けて、白い犬とフルーツのスタイルを合わせたい」というように、他社の売れているものやファッションの流行などを調査して出すようにしています。

どちらかといえば理詰めに近いかもしれません。

商品化の理想と現実

ーー企画に携わる上で大変だと思うことを教えてください。 ‎

大変なのは、商品化を進めるにつれ、最初の理想の形から段々と変わってしまいそうになるところをコントロールすることです。

企画したときにイラストを書いて「こういうのを作りたい」「これが一番かわいい」と思っていても、安全性や値段の制約、大量生産に向いている形と向いていない形などの問題があり、進めていくうちに変わってくることがあります。

慣れてくると「ここはもう駄目そう」というラインがわかってくるので、最初から商品化に向いたものを考えるようになります。

1年目くらいはそこがなかなか思うようにならなくて大変でした。

また、カプセルトイはスピード勝負でもあるので、今流行っているものが発売するときまで熱が続いているのかを考えながら企画するのもコツが要ると思います。

人気の商品にある売れるポイント

ーー田邊さんご自身、入社当初と現在では企画する上での考え方に違いはありますか? ‎

入社したての頃は、タカラトミーアーツの「パンダの穴」というユニークなブランドの影響も強く受けており、”変わったもの”や”突飛なもの”を出して驚かせたいという気持ちが大きかったです。

しかし、実際はそういったユニークさだけを考えるとインパクトだけが先行してしまい、「欲しい」と思わせるところまで到達できないことがわかりました。

ユニークで人気の商品には、一見突飛なものに見えても、実はただ破天荒なだけでなく売れるポイントがあることが次第にわかっていきました。

そこから、自分が面白いと思うことをそのまま出すだけでなく、商品として、世に出すものとしてどうしたら売れるのかを考えて作れるようになりました。

大量のガチャの中で目立たせる工夫

ーー最近はガチャの専門店が増えていますが、それによって企画の方向性などに変化はありましたか? ‎

専門店が増えたこともありますが、カプセルトイの流行もあり、企画量も増えています。また、専門店の中で自分の商品を目立たせるために、台紙デザインも工夫するようになりました。

例えば、ファンシー系のキャラクターなら、他社も似たような商品を出しているので、あえて黒背景にして渋く作る工夫をして、大量に置いてある場所でどう目立たせるかを考えたり、タイトルと写真どちらを優先して目立たせるかなどを商品の特性に合わせて考えたりするようになりました。

当社のガチャマシンは、台紙部分が湾曲しており上半分が目立つので、なるべく上の部分に重要な情報をいれるなど、お客様目線に立ったシミュレーションをして対応しています。

自分の「やりたい」を大切に

ーー「かわいい」を企画する際、自分が思う「かわいい」が世間に受け入れられないこともあると思いますが、どう考えていますか?

もちろん自分が「かわいい」と思っても、世間的に受け入れられないこともあります。ですが、広くは売れなくても、「これしか集めない!」というような強いファンがつくことがあります。

ガチャは商品が多いので、大衆に広く売れるものもあれば、特定のファンに売れるものもあり、その凹凸があるのもガチャの特徴だと思います。

「これって本当にかわいいかな?」と考えることもありますが、自分が一番かわいいと思ったものを突き詰めれば、自信をもって営業をすることができたり、一貫した強いコンセプトの商品に仕上がったりと、良い商品になると私は思います。

忖度しすぎて普通なものになるよりは、信じて突き抜けた方が良いと私は考えています。

実際、何度も落とされても「これは絶対売れる」と言い続けて実現し、実際に発売した際に話題になった商品もあります。

自分がやりたい、売れると思って進んだものがインパクトを残すと思います。

次回:【第2回】売上400億超!タカラトミーアーツが明かすガチャ®躍進の裏側と、自社マシンが生む強み(仮)

 

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