【第3回】時給100ドル超も。米大手航空会社CAが語る、育児と収入を両立するキャリア戦略と文法重視の英語学習法

「65歳まで飛び続ける。それは理想ではなく、現実的な目標です」

アメリカの航空会社で働く最大の魅力は、ライフステージに合わせて働き方を自分でコントロールできること。

最終回となる第3回では、時給100ドルを超える給与体系や育児との両立術など、外資系CAのリアルなキャリア戦略を公開します。

さらに、予備校講師の経験を持つすなおさん直伝の「文法重視」の英語学習法や、これからの時代に求められる「人の価値」について、熱いエールを届けていただきました!

Thomas 順(すなお)

17歳で高校の交換留学生として初渡米。帰国後は立教大学を卒業し、日本で一般企業に就職するも、再び海外へ。

2008年よりフロリダのウォルト・ディズニー・ワールドにてインターナショナル・プログラム(CRプログラム)に参加。2011年には就労ビザを取得し、ディズニー米国三越でマネジメント職を務める。

2018年、キャリアの方向性を大きく転換し、アメリカン航空のフライトアテンダントに転職し、国内・国際線問わず乗務している。

子育てと両立しながら65歳まで飛び続ける

――すなおさんが今後挑戦したいことや、目指しているポジションはありますか?

まず一番現実的な目標としては、65歳くらいまで飛び続けることですね。

これは「できたらいいな」ではなく、「たぶん、いけるだろうな」と思っています。

CAのスタート時給と最高時給

今後、勤続年数が進めば、計算上は毎月1本以上、羽田便に乗れるようになります。

羽田便の何がいいかというと、とにかく効率がいいんです。羽田便1本で、約27時間分のフライト時間が発生します。

アメリカの航空会社は全員時給制で、基本給はありません。どれだけ飛んだかで収入が決まります

スタート時は30ドル台でしたが、14年目で最高時給の約104ドルに到達します。

私は8年目なのでそこまでではありませんが、上手く活用すれば育児と収入の両立が可能です。

子育てしながら少ない日数で稼ぐ

会社のルールで月に最低40時間は飛ばなければいけないのですが、国内線だけで40時間を稼ごうとすると、9日以上働く必要があります。

一方、羽田便は3日間のトリップ × 1本で27時間。これを月に2回飛べば、それだけで55〜56時間になります。

つまり、月に6日ほど働くだけで条件をクリアできる。それだけで、日本の一般的な会社員以上の収入になる。

これは、子供を持つ親の働き方として、とても魅力的だと思っています。

仕事と家庭、どちらも大切にしたい

私の理想は、月に2本羽田便を飛んで、家にいる時間を増やすこと。

これから子どもも学校に通い始めますし、送り迎えなどにも、きちんと関わりたい。

「仕事は好きだけど、全部を仕事に預ける」のではなく、ワークライフバランスを自分で選べる状態を作りたいんです。

パーサーというチームリーダー

もう一つの目標が、パーサーです。

国際線には必ず1人、チームをまとめるリーダーがいて、それがパーサー。試験に合格しないとなれません。

私は以前ディズニーで新人研修を担当していましたし、大学も教育学科。「人に伝える」「チームで何かを作る」という役割は、もともとすごく好きなんです。

目安としては、15年目あたりでパーサー試験に挑戦し、日本便でパーサーとして飛ぶこと。

そのためにも、まずは安定して羽田便に乗れるシニオリティ(社内での優先権)を築く。それが今の目標です。

航空業界の自動化と変わらない「人の価値」

航空業界は、これから確実に変わっていくと思います。

AIやロボットが進化すれば、チェックインカウンターも、配膳も、自動化されていくでしょう。パイロットや客室乗務員の人数も、今より少なくなるかもしれません。

それでも私は、人が完全にいなくなる業界ではないと思っています。

人は、人に話を聞いてもらうと安心するし、人に対応してもらうことで、初めて納得できることがある。

シニアになったからこそ、できるサービスを

私が60代になった頃、機内にいるクルーの数は今より少ないかもしれません。でもその分、何十年も飛んできた人にしかできないサービスが、きっとあると信じています。

そのときに、日本人としての細やかさ、気配り、安心感。そういう「変わらない価値」を体現できるクルーでいられたらいいな、と思っています。

業界がどう変わっても、「あなたがいてくれてよかった」と思ってもらえる存在であり続けたい。それが、今描いている私の将来像です。

これから航空業界を目指す人へ伝えたいこと

――これから航空業界を目指す人に、伝えておきたいことがあれば教えてください。

どこの国で働くにしても、英語は必ず使います。これはやっておいて損はないですし、「やっておけばよかった」と後悔する人は多いと思います。

できれば、第3外国語にも挑戦してほしいですね。

ヨーロッパの人たちは、5つも6つも言語を話すのが普通だったりします。そういう中で、日本人でも複数言語を武器にできる人がどんどん出てきたらいいな、と思います。

言語を身につけることは、自分の選択肢を増やすこと。これは間違いないです。

ロングフライトに必要なのは「柔軟性」

国際線、特にロングホールのフライトでは、10時間以上、逃げ場のない空間でクルーやお客様と向き合うことになります。

だからこそ、柔軟性や順応性がないと、本当に苦しくなる。私自身、多国籍環境で働いてきましたが、今ほど「柔軟であることの大切さ」を感じたことはありません。

「こんな考え方もあるんだ」

そう受け止められるかどうかで、仕事のしやすさは大きく変わります。

今のうちに、日本を出てほしい

できるなら、若いうちに日本を出て、いろんな国を見てほしい。カルチャーショックをたくさん受けておくことは、将来必ず役に立ちます。

「世界には、こんな価値観がある」

その体感があるだけで、国際線の現場ではとても楽になります。

体力は、立派なスキル

航空業界で働くには、体力は必須です。

早朝3時に起きて、4時に運転して、5時のフライトで出勤する。時差のあるロングフライトも多く、体への負担は決して小さくありません。

だから、若いうちから体力をつけておくこと。これは本当に、やっていて損はないと思います。

ちょっとした準備が、あとで効いてくる

テクニカルな話をすると、空港コード(IATAコード)を覚えておくのもおすすめです。

羽田ならHND、ロサンゼルスならLAX、といった3レターコードですね。

すべて覚える必要はありませんが、旅行で行った場所だけでも知っていると、現場でとても役に立ちます。

「なんで嫌なんだろう?」と、一歩立ち止まる癖

心構えとして一番伝えたいのは、「自分が嫌だと思った理由を考える癖」をつけることです。

「これ、なんでこんなに嫌なんだろう?」
「それは自分の価値観だけかもしれない」

そうやって一歩引いて考えられると、気持ちがすごく楽になります。これは仕事だけでなく、日常生活でも同じです。

私の夫はアメリカ人ですが、「これは私が日本人だからそう感じているだけかもしれない」「今はアメリカにいるんだから、これが普通なんだ」と考えるようにしています。

感情の沸点を下げるシンプルな習慣

イラッとしたとき、そのまま感情を爆発させるのではなく、「なぜ?」と一度考える。

それだけで、感情の沸点がすっと下がることがあります。

この習慣は、クルーとの関係でも、お客様対応でも、家族や友人との関係でも、本当に役に立ちます。

語学、柔軟性、体力、そして自分を客観視する力。

語学、柔軟性、体力、そして自分を客観視する力。

どれも、特別な才能ではなく、今から意識すれば身につけられるものです。

航空業界は決して楽な世界ではありませんが、その分、得られる経験は計り知れない。

ぜひ、自分の可能性を狭めずに、挑戦してください!

CAに求められる語学力と英語勉強法

――順さんおすすめの英語の勉強法があれば教えてください。

実は私、大学時代に予備校で英語講師をしていたんです。

そのときに強く感じたのが、「発音」や「スラスラ話すこと」にフォーカスしすぎている人が、とても多いということでした。

もちろん、きれいな発音で話せたら素敵です。でも、英語は単なる“音のマネ”ではなく、情報を正しく理解し、正確に伝えるためのツールなんですよね。

「通じたからOK」「なんとなくわかったからOK」

それで止まってしまうと、実はとても危険だと思っています。

文法は1番大事!やった分だけ、必ず伸びる

私が一番大切だと思っているのは、文法です。

文法って、センスではなくて、完全に事務処理能力。やればやった分だけ、必ず身につきます。

文法が曖昧なままだと、

「なんとなく話せているけど、内容が幼く聞こえる」
「言っていることが少しズレて伝わる」

そんな状態になりがちなんです。

特に、私のようにアメリカの航空会社で働く立場になると、「私は日本人だから英語が苦手で…」という言い訳は通用しません

お客様も、同僚も、パイロットも、私を“英語ができる前提”で見ているからです。

文法が固まると、世界が一気に広がる

文法をしっかり固めていくと、ある瞬間から急に、

「え、これってこんなに簡単なことだったの?」
「今まで難しく感じていた文章が、すっと理解できる」

そんな感覚が訪れます。

ハードルがどんどん下がり、
・語彙が自然に増える
・会話が怖くなくなる
・自分の言い間違いに自分で気づける

という好循環に入っていくんです。

TOEICの点数が「答え合わせ」になった

実は、ディズニーの米国三越社を受けるまで、TOEICを受けたことがなかったんです。対策本も一切使っていませんでした。

でも、いざ受けてみたら、「これくらいあれば合格圏」と言われていた目安を大きく超える点数が出ました。

そのときに「今まで地道にやってきたことは、間違ってなかったんだな」と思いました、

語彙は、文法のあとについてくる

文法が固まれば、語彙は自然に増えていきます。

「なぜこの言い方になるのか」が分かるから、記憶にも残りやすい。

これは英語だけでなく、私が勉強している韓国語でも同じです。文法が分かっていないと、自分の間違いにすら気づけないんです。

発音は「最後」でいい

文法と語彙が身につき、理解のスピードが上がってくると、発音も自然と整ってきます。

その頃には、「あなた、きれいな英語を話しますね」と言われるようになる。

だから最初から発音にこだわりすぎなくて大丈夫。順番を間違えないことが、何より大事だと思います。

英語勉強法まとめ

・まずは文法
・次に語彙
・伸びるリズムに乗ったら、あとは加速するだけ

これは私自身が体験してきたことです。

英語は、正しく積み上げれば、必ず力になります。ぜひ、焦らず、地道に取り組んでみてください!

自分は思っている以上にできる—若者へのエール

――最後に、今の若い世代にエールをお願いします。

私が一番強く思っているのは、「みんな、自分が思っている以上にできる」ということです。

日本人って、「謙虚であるべき」とか「これを言うと出しゃばりかな」とか、無意識のうちに自分をせき止めてしまうことが本当に多い。

でも、もっと「自分はできる」って思っていいと思うんです。

別に、何か大きなことを成し遂げろとか、表舞台に立てとか、そういう話ではありません。

どこにいようと、どんな立場であろうと、今よりもう一歩踏み出せる力は、誰の中にもある

もう少し挑戦できたかもしれない

正直、若い世代を見ていて

「もっとやっていいのにな」
「こんなところで止まらなくていいのにな」

と思うことが本当に多いんです。

それを見ていると、すごくもったいないと感じます。

私自身、今は「いい人生だな」と思えていますけど、それに気づけたのは30代を超えてからでした。

もしもっと若い頃に、「自分はもっとできる」って思えていたら、アメリカに来た当初から、もっといろんなことに挑戦できていたかもしれない。

そう思うことも、正直あります。

自信を持つことは、恥ずかしくない

日本では、

「自信を持つ=生意気」
「自己主張=出しゃばり」

と捉えられがちですよね。

でも、自分を信じることと、傲慢であることは全く別です。

「自分はできるかもしれない」

そう思えるだけで、挑戦のハードルはぐっと下がる。

それが、日本人に少し足りない“自分へのガッツ”なんじゃないかな、と思っています。

若さは、最大の武器

私は今44歳ですが、20代だったらもっとできたのに、と思うことはやっぱりあります。

それって裏を返せば、若さそのものが最大の武器だということ。

本人が気づいていないだけで、体力も、時間も、柔軟性も、可能性も、全部そろっている。

だからこそ、「自分にはできる」

そう思って、怖がらずに挑戦してほしい。

一歩踏み出してみよう

自分を過小評価しないでほしい。

遠慮しすぎなくていい。

「自分は、もっとできる」

それを心のどこかに置いて、一歩踏み出してみてください。

きっと、できることは想像以上に増えていくと思います!

【取材:溝口萌衣 / 編集:吉中智哉】

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