#2 【旅ぼら】旅行しながら社会貢献?!若者たちの成長を支援するNPO法人HEROのインターンシップとは
大学生活で「何か特別な経験をしてみたい」と思ったことはありませんか?
そんなあなたにぴったりの活動が「旅ぼら」です。NPO法人HEROが主催する「旅ぼら」は、カンボジアで学校建設やビジネスインターンを体験できる、若者向けのボランティアツアー。
このプログラムは、ただの海外ボランティアではありません。現地での学校建設や運動会の運営、さらにはビジネスインターンまで幅広い活動を通して、自分自身を成長させる絶好のチャンスです。
社会貢献に興味はあるけど、給料が低いというイメージが強いNPO。そんなNPOの常識を覆す活動をしているのが、NPO法人HEROです。ビジネスとボランティアを融合させた、新しいNPOのあり方を紹介します。
【橋本博司さん】
1978年生まれ。法政大学経済学部卒業。
大学卒業後、飲食店経営、世界一周旅行、大手企業での新卒採用責任者を経て、2011年にNPO法人HEROを設立。PO法人HERO代表。株式会社ペイフォワード代表。
「旅するように働く」を人生のテーマにカンボジアの教育問題に取り組む。大学生向けにカンボジアでインターンシップを開催。
目次
「旅ぼら」とは?
ーーNPO法人HEROさんの活動内容にある「旅ぼら」とは何ですか?
「旅ぼら」は分かりやすく言うとボランティアツアーです。名前の通り「旅」+「ボランティア」を意味します。
NPO法人HEROの「旅ぼら」は大きく2つに分けることが出来ます。
1つ目がカンボジアで学校建設や運動会の運営。参加者で多いのは、大学生の方ですが、親子連れや社会人、中高校生もいらっしゃいます。かなりたくさんの方が応募してくれていて、2024年春夏で約350人の参加がありました。
2つ目が、ビジネスインターンです。内容はボランティアではなく、端的にいうと、カンボジアで3日間でビジネスを立ち上げるインターンです。
マーケティングをして、事業計画を考えて、プレゼンをして、営業活動としてお客さんにサービスや商品を提供し、実際にお金をもらうところまでやってもらいます。利益が出たら、その利益分で学校の子供たちに何かプレゼントを買います。赤字だったら何も買いません。
ビジネスを学びながら、利益を上げたら子供たちに貢献できる内容のビジネスインターンです。
関わった人の変化がやりがい
ーー橋本さんはHEROの活動中、どんな時にやりがいを感じますか?
最初に学校を作ったときなど、要所要所で、やっていて良かったなと思う瞬間があります。旅ぼらやインターンを続けていると、参加者がどんどん変化していくんです。
カンボジアをきっかけに新しい仲間を得たり、変化したりして参加者同士で化学反応が起こる様子を目の当たりにすると、やりがいを感じずにはいられません。
参加者の方が帰国後に日本で起業するなど、活躍している姿を見たときにもやりがいを感じます。
NPO法人HEROの収益モデル
ーー HEROの主な収益モデルについて教えてください。
収益モデルを大きく分けると、寄付金、事業収益、個人会員の会費の3つに分かれます。助成金補助金はほぼ取っていません。
寄付金は主に学校建設系に使用しています。38ヶ所の学校の他に、図書館が11ヶ所、コロナ後から作り始めた幼稚園が4ヶ所あります。そうした施設の建設費用は寄付金で賄っています。
寄付をもらう企業として共通しているのは、創業社長自身が起業家で、会社を作って、慈善活動に使いたいと考えている、大体50歳代以上の方が多い傾向にあります。
ただ、事前に学校の候補地を探しに行って、何ヶ所も見て回ったり、また、作った後に軽微なメンテナンスなどを行ったりすると、基本的に寄付金のほとんどが学校建設の方に回ってしまいます。
そのため人件費を捻出するのがなかなか難しくなります。
ボランティアやインターン参加費の活かし方
一方、学校を作ることによって、今度は旅ぼらやインターンなどのツアーが組めます。これらのツアーで組むことで得た収益源によって、うちの団体の人件費などを賄っています。
前回紹介した病院に関しては、別のビジネスモデルを組んでいるので、病院だけで成り立っています。
まだまだ上手くいっていませんが、現地にも旅行会社を立ち上げたのでそちらもうまく組みこみながら、サステナブルやSDGsに関して、国内外の方が学校や農村部に行けるツアーを組んでいきたいと考えています。
過去参加者は半額になる
ーーインターンや旅ぼらの過去参加者は半額になると伺いました。この制度はどうして導入したのですか?
海外ボランティア2回3回と来てくださると、世界が身近に感じて面白くなってきます。
先日も過去参加者限定のネパールツアーをやりましたが、ネパールに直接日本から来た参加者はいませんでした。「インド寄ってきました」や、「スリランカで観光してきました」と話す人ばかりで、多様な場所からネパールに集まり、解散していきました。
どんどんカンボジアに来て海外慣れをしてほしいという思いがあります。
海外は行けば行くほど慣れてくるので、参加者にはより多くの海外経験をしてほしいため、2回目以降半額の制度を導入しています。
人の繋がりを大切に
ーーリピートされる方が結構いらっしゃるのでしょうか?
毎回参加者の3割ぐらいが過去参加者です。
多い人だと、大学1年生から年に1,2回のペースで参加して、在学中に7回カンボジアに来た人がいます。社会人になってからもう一度参加する人も多いです。
今年のゴールデンウィークも、過去にカンボジアに行った現在30歳くらいのメンバーみんなで現地の学校を訪問しました。
過去参加者のつながりも私たちの活動のメリットです。過去参加者は日本で商社や銀行など様々な業種に就いています。業種を横断したつながりは貴重だと感じています。
人脈が一番の財産です。お金以上に人脈はありがたいものです。
ある人から別の人を紹介してもらうことで、プロジェクトが軌道に乗ることもあります。今後も変わらず、人を大切にしていきたいです。
ビジネスインターンのテーマ
ーーインターンのお題はどのようにして決められているのですか。
最初の数年間は、フードコートの一角の店舗を借りて、「ここで商売してみろ!」というような具体的なテーマを用意していました。
ただ、もっと抽象度を上げても面白いかなと思って、最近では「価値を提供して、収益を上げろ」というテーマにしています。
そこまで抽象度を上げても、参加者の方々は自分たちで考えて取り組むことが出来ています。抽象度が上がると、難易度は徐々に高くなりますが、その分面白いアイディアが出てきます。
価値提供と営業代行
別にもう少し抽象度を下げたテーマとしては、「営業代行をして収益を上げろ」というものです。
営業代行とは、どこかの商品を代行して販売したり、サービスを代行して販売するということです。
仮に私がどこか知らない国に行って商売しろと言われたら、まず最初は、絶対に営業代行をします。
なぜなら、他社の商品やサービスを販売するので、自分で商品開発する必要が無いからです。商品が何もない状態から始められるのが営業代行です。
このように、テーマとしては、価値提供と営業代行の二つで運営しています。
NPOと給与事情
ーーNPOのお仕事は社会貢献性が非常に高い一方で、給与が少ないというイメージがあるのですが、橋本さんご自身はどのようにお考えですか?
まさに給料が低いことが一番の課題だと感じています。
例えば、ある人が学生時代にカンボジアを訪れたことがきっかけで、将来途上国に貢献できる仕事がしたいと考えたとします。でも、いきなり新卒で途上国支援の企業に就職することは難しいでしょう。そもそも募集がかかっていない場合も多いです。
そこで、まず入社した企業でWebマーケティングの仕事をして、30歳くらいになると、ある程度能力が身につきます。そしてカンボジアでWebマーケティングを教えるためにNPOに転職しようと思い至ります。
しかし、給料が半分、三分の一に減るとなると、足踏みをする人が多いのです。つまり、優秀な人ほど、本当に途上国支援がやりたくてもこの業界に飛び込めない。
男女関係なく、結婚を機に給料が安いという理由でNPOから一般企業に転職する人がたくさんいます。NPOでの仕事は内容としては最高だけれど、家族を養うのは厳しいわけです。
人材の流動性が高い欧米NPO
一方で、これがアメリカやヨーロッパだと、給料がほぼ一緒、またはNPOの方が給料が高いことがあります。したがって人材が流動します。
優秀な人材も入ってくるし、一度民間企業に就職して別のスキルを身に付けて、またNPOに戻ってくることもできます。
人材の流動性が低いと業界全体が発展していかないので、日本のNPO職員の給料は大きな課題です。
新進気鋭の日本NPO
しっかりと高水準の給与を出している団体の例として、インドやカンボジアで子供に向けた活動をしているNPO「かものはしプロジェクト」が挙げられます。
収入が高く、全社員平均給与も一般企業並みかそれを上回っています。
うちはスタッフは少ないですが、例えば30代女性のスタッフには、その年齢の平均よりも高い給料を出しています。
今後、日本でもビジネスモデルを組んで、きちんと収益をあげるNPOは増えてくると思います。
「かものはしプロジェクト」や「テラ・ルネッサンス」「TABLE FOR TWO」は僕と同じ、40代中盤くらいの人が運営しています。NPOの第1世代の人たちと言えるでしょうか。
特に、今の30代やそれよりもっと若い世代が運営しているNPOは、僕たちの世代よりも一層、ソーシャルビジネスとして収益を上げていこうという流れがあります。
ビジネスモデルを組んで事業化していくのはすごく大変ですが、ただのボランティアではなく、収益を上げながら社会貢献をするNPOが増えてきている印象です。
[ 文:川上友香梨 / 編集:吉中智哉]
[デザイン:松谷萌花]